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ちょっといい話多めで、ホラーとしてはヌルい短編集。少女の幽霊出すぎでは?-『告別』

『告別』

赤川次郎/1995年/352ページ

深夜の山道で偶然見つけた奇妙な電話ボックス。そこから古い友人にかけた電話が、過去へと続く不思議な扉を開けてくれた。もしも、昔の自分に戻ってもう一度人生をやりなおすことができるとしたら。かつて別れたはずの人と、再び出会うことができたなら。そんな不可能なはずの願いが、一本の電話から現実になっていく…。(長距離電話)人生に必ず訪れる、愛する人との「告別」の時。七つの別れを様々に綴った、ミステリアスな作品集。

(「BOOK」データベースより)

 

 タイトル通り、別れをテーマにした短編集。超自然要素はあるものの7編のうち5編は『世にも奇妙な物語』のヌルい回みたいな「ちょっとイイ話」でホラー要素は薄い。全体的に少女の幽霊が出すぎという難点はあるが、さらりと読めるし話自体はそれなりに面白い。

 「長距離電話」-かつて交通事故で死別した恋人の「過去からの電話」を受けた男。事故のことを彼女に伝えれば、過去を変えられるかもしれないと考えるが…。「自習時間」-死んだ少女の幽霊との出会いで不良少年が立ち直る話。「優しい札入れ」-別れた愛人からいくらでもお金が出てくる財布をもらった男の話。甘やかしすぎ。「愛しい友へ……」-引っ越していった友達に生霊になって会いに行く少女の話。大会社の工場が移転するせいで過疎化が進む町が舞台で、誰も幸せにならない無常さが際立つ。ラストにちょっとした希望を持たせようとしているが焼け石に水過ぎる。「雨雲」-嫌なことがあると周囲に雨を降らせる能力を持つ男が、会社に行く途中で大雨に降られて難儀する話。

 後半2つの話は比較的ホラー要素が強いのだが、これまた少女の幽霊が出る話である。「敗北者」-痴情のもつれで殺された女子高生は、冥界へ連れていくための誠実な男を探していた。酔った勢いで彼女の霊とセックスしてしまった男は、馬鹿正直にそのことを妻に話したため誠実と判定されてしまう。「あんたの夫、連れて行くから」とわざわざ妻に伝えに来る少女。平和な家庭がいろんな意味で危機に陥る! 「灰色の少女」-かつて行方不明になった同級生が、20年前の少女の姿のままで目の前に現れた…という大変よくある話。少女が行方不明になった真相も容易に想像がつく内容だが、その執念が実るラストには空恐ろしさを感じる。

★★★(3.0)

 

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