『先生』
吉村達也/1995年/350ページ
雪のように白い肌と鋭い目、びっしり生やした髭面―それが総美学園中等部三年A組の担任として赴任してきた北薗雪夫先生だった。だがその先生には、五人の中学生を次々と殺した驚愕の過去があった。幼い頃、色の白さから女の子のようだとからかわれて対人恐怖症に陥った雪夫は、子供しか相手にできない。だから先生になったのに、生徒たちからもバカにされ、歪んだ愛と沸謄する怒りは異常な形で爆発した。その最新の標的は羽鳥真美子、十五歳…。書下し。
(「BOOK」データベースより)
真美子たちの中学校に新しく赴任してきた26歳の英語教師、北薗雪夫。美しく白い肌と澄んだ瞳、それに似つかわしくない髭面を持つこの教師は、実は対人恐怖症でマザコンで多重人格の殺人鬼なのでした…というお話。
こういうストーリーの場合、だいたいは「優しくて生徒にも人気の教師、だがその裏の姿は…」というパターンになると思うが、本作の殺人鬼・北薗は違う。まず赴任してきて最初の挨拶で「男子を“さん”付けで呼ぶ」「反抗的な生徒を徹底的にマークして厭味を言う」「生徒にオリビアだのジュディだの勝手な名前を付ける」など、「はっきりとは言えないがこの人はなんだかヤバい」と生徒たちに思わせるのにじゅうぶんなプチ奇行を散々にやらかす。この初ホームルームの異常さはぜひ実際に読んでもらいたい。さらに最初の英語の授業では速攻で生徒たちを怒らせて反撃をくらい、オネエ言葉で号泣しながら教室を飛び出す始末。これはヤバい。
ここまでが本書の3分の1くらいで、残り3分の2はひたすら北薗とその母親の異常っぷりが特盛りの山盛りで語られていくのである。面白過ぎる。いくらなんでもここまで目立つキチガイならもっと早く逮捕されてるだろと思うが、本書は北薗の乱心ぶりを楽しむ一冊なのでそういうツッコミは野暮というものです。
★★★(3.0)