『呪怨 パンデミック』
大石圭/2007年/332ページ
住宅街の一角にひっそりと建つ幽霊屋敷として有名な「ある家」。その家に足を踏み入れた者たちは次々と謎の死や失踪を遂げていた。そこではかつて伽椰子という女性が夫に惨殺され、当時6歳だった長男の俊雄も行方不明のままとなっていた。そしていま、またもや少女たちの悪ふざけが、その家に宿った怨念を呼び覚ましてしまう…。おぞましき伽椰子出生の秘密が明らかに。
(「BOOK」データベースより)
ハリウッド版『THE JUON/呪怨』の続編。どうしても焼き直し感があった『呪怨2』『THE JUON/呪怨』とは異なり、日本とアメリカの両方を舞台にしているのが新鮮。伽椰子に関する新事実も発覚し、見どころは多い。あとノベライズ版で各章の頭にあった海外ふしぎエピソードが省かれているのも良いと思う(アレは緊迫感をだいぶ削いでいた)。
前作の主人公カレンの妹・オーブリーと香港人ジャーナリスト・イーソンが「呪いの家」と伽椰子の真実に迫る“ケースA”、アホの女子高生たちが呪いの家へ肝試しに行って案の定大変なことになる“ケースB”、シカゴのアパートメントで仲睦まじい家族が崩壊していく様を描く“ケースC”の3つの事件が同時進行していく構成となっている。当初は他の2つとの関連性が不明のケースCがアクセントになっており、アパート全体に「憎悪」が感染拡大していく様は往年のモダンホラーのような雰囲気がある。ラストにおいて伽椰子の呪いはついに日本を跳び越え、世界に広まっていくという展開なのだがこれもハリウッド映画らしくて良いじゃないですか。「あまりにも深い憎悪」という一芸で、世界中を不幸に陥れていく伽椰子のパワフルさには流石としか言いようがない。今回、伽椰子の幼少期のエピソードが明かされ、彼女が“特別”であったことも判明するのだが、それを考慮してもこれだけ他人の幸せを憎んで憎んで憎んで憎んで憎んで憎んで憎みまくる異常性はワールドクラスである。
★★★(3.0)