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Jホラー界で二番目くらいに有名なパワフル呪殺ヒロイン・伽椰子の誕生を描く秀逸ノベライズ-『呪怨』

『呪怨』

大石圭/2003年/314ページ

老人介護のボランティアをしている仁科理佳は、寝たきりの老婆・幸枝の様子を見てきて欲しいと頼まれる。郊外の住宅地にあるその家の中は、悪臭が漂い、ゴミが散乱していた。理佳が人の気配を感じて二階に上がるとガムテープで封印された押入れが目に飛び込んできた。理佳は、恐る恐るガムテープを剥がし…。そのあまりに恐ろしい映像ゆえに、発禁寸前となった伝説のホラービデオ「呪怨」がついに映画化。

(「BOOK」データベースより)

 

 清水崇が監督・脚本を手掛けたビデオ版『呪怨』『呪怨2』と映画版『呪怨』のノベライズ。貞子には及ばないものの、Jホラーのヒロイン(?)としてはそれに次ぐ知名度を誇ると思われる「伽椰子」がいかにして“誕生”したのかが描かれている。どちらかというと、ビジュアル的には伽椰子よりも俊雄(表紙の白塗りキッズ)のほうが『呪怨』を象徴するキャラとして扱われている気もするが。

 そもそも清水崇の『呪怨』の怖さは卓越した映像センスにあるため、小説でその恐怖を再現することは不可能に近い。大石圭はその偏執的かつ生々しい鬼畜描写で、映像が持っていた怖さとは別ベクトルのホラーに仕上げることに成功している。内気で目立たない女性だった伽椰子が恋を知ったことがすべての悲劇へとつながり、この世のあらゆる者を憎んで憎んで憎み殺していく様はパワフルとさえ言える。貞子のようなトリッキーさは無く、ただもう無慈悲に惨劇の連鎖が続いていくだけ(なんせ3作品分なので)だが、これがけっこう読ませるのである。映像では少々分かりにくい伽椰子の内面もしっかり描かれているし、時系列がバラバラのため理解に時間を要する映画版のストーリーの流れもわかりやすくなっている。映像とまた異なる形でアプローチすることに成功した、理想的なノベライズである。

★★★☆(3.5)