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学校の怪談としてパーフェクトな1冊。前作主人公の驚くべき真実も…-『真夜中の時間割 -転校生2-』

『真夜中の時間割 -転校生2-』

森真沙子/1995年/281ページ

桜の花の咲き乱れるころ、新卒の国語教師として都内の名門高校に赴任してきた萩尾圭子。学校という閉ざされた空間の中で、不可思議な出来事が圭子を襲う。春の校庭で、初夏の教室で、修学旅行で、目には見えないもうひとつの世界が圭子の前に顔をのぞかせる…。書下し学園ホラー。

(「BOOK」データベースより)

 

 主人公は新人国語教師・萩尾圭子。舞台はどの話も彼女が赴任してきた私立桜台高校となっている。最終話では前作の主人公・有本咲子が“転校生”として登場し、驚きの設定――前作の咲子に感じられた違和感の正体が明らかになる。

 

 「第一話 桜の木の下 ―新学期」では、優美ながらもどこかミステリアスな生徒・杉原に魅せられる圭子。桜に囲まれた弓道場でひとり弓を引く杉原の姿は、その鮮烈な幕切れも相まって印象的。「第二話 午後3時30分 ―放課後」は、パソコン通信で“向こう側”とつながってしまった生徒の話。「第三話 記念写真 ―午後の教室」は、かつて天才画家と持て囃されていた芸術家くずれの美術教師の話。かつての才能のきらめきも失せた彼が、世捨て人のような生活を送るようになってしまった原因はとある事故にあった…。第一話と同じく、“花”のビジュアルが美しくも儚い一作。「第四話 閉じ込められて ―夜の学校」は典型的な学校怪談といった雰囲気のショートショート。「第五話 家路 ―器楽祭」は、音楽教師・蛎崎の過去にまつわる因縁話。器楽祭を前に指揮者として生徒たちを指導する蛎崎だが、とあるバイオリン担当の生徒に対しヒステリックなまでに怒りをぶつける。器楽祭が近づくにつれ目に見えて情緒不安定になっていく蛎崎をみな心配するが、その原因は当の生徒の生い立ちにあった。「第六話 百鬼の夜 ―修学旅行」は、修学旅行の夜、生徒と教師が集まって行われる百物語。正統派の怪談、冗談みたいな笑い話、不可解極まる話などが次々と語られ、さてお開きとなったその時、外には赤くゆらめく何かが飛び回り…。「第七話 最後の授業」では、上述の通り前作の主人公・有本咲子が圭子の前に現れる。学園の周りで放火事件が連続して発生。それが起き始めたのは奇しくも咲子が転校してきた頃と重なっていた。火事の現場で咲子の姿を二度連続で見かけた圭子は、咲子が何かを知っているのではと考えるが…。

 

 格段に怖いホラーというわけではないのだが、いわゆる「学校の怪談」としては素晴らしい作品だと思う。教師も生徒も個性的な人物揃いで、学園の風景の描写自体は決して多くはないのだがリアルな息遣いが感じられ、どこかノスタルジックでもある。作者の語り口の巧さに浸りきってほしい。涌田利之の口絵・イラストも良い雰囲気。

★★★☆(3.5)

 

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