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顔をくりぬいてご飯を詰めるどんぶり村の奇習が蘇る!? 強引でパワフルなバカホラー-『夜葬』

『夜葬』

最東対地/2016年/288ページ

ある山間の寒村に伝わる風習。この村では、死者からくりぬいた顔を地蔵にはめ込んで弔う。くりぬかれた穴には白米を盛り、親族で食べわけるという。この事から、顔を抜かれた死者は“どんぶりさん”と呼ばれた―。スマホにメッセージが届けば、もう逃れられない。“どんぶりさん”があなたの顔をくりぬきにやってくる。脳髄をかき回されるような恐怖を覚える、ノンストップホラー。第23回日本ホラー小説大賞・読者賞受賞作!

(「BOOK」データベースより)

 

 死体の顔をくりぬいて地蔵に埋め、空いた穴にはご飯を詰めて食べる…。いくら寒村の奇習でもそんなことやるわけねーだろ! と思うが、このインパクトはあるが強引極まりない設定をゴリ押すスタイルは作者の持ち味でもあるので、合わない人にはとことん合わないかもしれない。
 本作で語られる「どんぶりさん」は、一定のルールのもと、被害者に逃れられない死を与える理不尽系の都市伝説の怪異ではあるのだが、そのルールがはっきり言って適当。トリガーとなっているのは『最恐スポットナビ』というコンビニ雑誌でどんぶりさんの記事を読むことらしい。この雑誌は流通しておらず、犠牲者の前に恐怖新聞のごとく届けられるのだが、その選定理由が不明瞭。どんぶりさんはスマホのナビを頼りに犠牲者の元にたどり着くという、よくあるカーナビ怪談とメリーさんを併せたような性質を持つが、なぜそんなことをするのかという根本的な理由もよくわからない。ルールありきの怪異なのにそのルールがいい加減なので読み終わってもいまいちスッキリしない。意味ありげに現れた見知らぬテレビ局員だとか、結局ガラケーはなんだったのかとか、伏線らしきものがほったらかしになっている箇所も多い。都市伝説に理不尽さは付きものだが、それは設定の適当さに言い訳にはならんのではないか。
 不自然なキャラ造形、妙な文章も含めていろいろ粗の目立つ作品だが、顔をくりぬかれるというエゲつない描写はインパクト十分だし、だれ場の無いスピーディな展開も悪くない。同作者の『えじきしょんを呼んではいけない』と同じく、何も考えずに読む勢い任せのパワー重視型バカホラーである。

★★★(3.0)

 

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