角川ホラー文庫全部読む

全部読めるといいですね。おすすめ作品等はリストから

ガスマスク姿の硫酸かけかけマン登場! 勢い任せの都市伝説ホラー-『えじきしょんを呼んではいけない』

『えじきしょんを呼んではいけない』 最東対地/2018年/288ページ 「アレを最初に呼ぼうと言い出したのは―」バイト仲間とある島に旅行に行った住谷秋乃は、フリーライターの京本陽介に旅先での恐怖体験を語り始めた。“えじきしょん”―島の住人がそう呼ぶ、人…

そうそうたるメンバーの純文学系ホラーアンソロジー。オールタイムベスト級の傑作も-『それぞれの夜』

『それぞれの夜 現代ホラー傑作選第1集』 遠藤周作(選)/1993年/283ページ 戦後の文学を築き上げた十人が織りなす、幻想と恐怖の宇宙。珠玉の十篇を収録。 収録作品 高橋克彦「遠い記憶」 三浦哲郎「楕円形の故郷」 黒井千次「音」 河野多恵子「雪」 澁澤…

死者との交霊という正統派テーマ。読ませる力作だが恐怖・絶望感は薄め‐『ゴーストシステム』/『禁忌装置』

『ゴーストシステム』 長江俊和/2002年/349ページ クラスでいじめられていた女子高校生・津田楓に、毎日繰り返し、アドレスを変えても送られてくる携帯電話のメール。そのメールとは受け取った人が自殺していくという噂のメールだった。そして同級生の希美…

俳句ホラー、漢字ホラーとしても秀逸な文字フェチ怪談。すきまから這いよる存在に聖域修復師が立ち向かう-『すきま』

『すきま』 倉阪鬼一郎/2008年/270ページ 手狭になったマンションを引き払い、思い切って一戸建てを購入することにした間庭夫婦は、郊外に中古物件を見つけた。その家は限られた予算の範囲内では破格の好条件だった。一人娘のあかりもだんだん大きくなる。…

伝奇ホラー、超能力、人形怪談、ピカレスクロマン…『ガラスの仮面』以前の怪奇傑作集-『人形の墓』

『人形の墓 美内すずえ作品集』 美内すずえ/1994年(復刊:2023年) /432ページ 『ガラスの仮面』の美内すずえの初期のホラー傑作短篇! 「黒百合の花が咲くとき、誰かが死ぬ」。不吉な”黒百合伝説”の影に脅かされる少女・安希子。そして彼女はこの呪われた家…

「寄生生物モノ」に期待する全シチュエーションを網羅。エログロに満ちたダークヒーロー譚-『バジリスク 寄生生物』

『バジリスク 寄生生物』 椙本孝思/2012年/347ページ 高校生の優奈は、幼い頃から猟奇的な悪夢に悩まされていた。そんな中、友人が無残な死体となって発見される。失意とともに、人間業とは思えない残虐さに恐怖する優奈に、話があると声をかけてきたのは…

時には淡々と、時にはユーモラスに市井の人々のドス黒さを描く短編小説+コミック-『隣人』

『隣人 内田春菊ホラー傑作選』 内田春菊/2002年/258ページ とある集合住宅で新生活を始めた共働きのカップル。夫はコピーライター、妻はスタイリスト。まわりは専業主婦ばかりらしい。最初は至極快適に思えた住まいだったが、やがてふたりの身辺に、不可…

残忍かつ滑稽、周到にて杜撰、美麗で醜悪。バラエティ豊か過ぎる殺人カタログ-『美しき殺人法100』

『美しき殺人法100』 桐生操/1996年/255ページ 遥かなる昔から、人は人を殺すために、様々な手法を編み出してきた。バラの花びらや接吻を使った奇想天外の殺人法から、残虐きわまりない逆さはりつけや塗りこめまで、そのアイディアと多様さには、目を見張…

ライバルの悪役令嬢がいちばんイキイキしてるラブコメ伝奇譚-『帝都月光伝 Phantom of the Moon』

『帝都月光伝 Phantom of the Moon』 司月透/2013年/285ページ 魑魅魍魎の跋扈する帝都・東京。主演に抜擢された女優が次々に行方不明および死亡するという、いわくつきの舞台『宵の歌姫』の上演が決まった。この不吉な作品の裏に“堕ちた月の民”の関与を感…

悪趣味描写に光るものはあるが、予想を裏切らない展開に物足りなさも…-『戦争大臣 III 吸血博士』

『戦争大臣 III 吸血博士』 遠藤徹/2011年/371ページ 崩れる街、破裂する人、闊歩する獣人。世界連邦の雄モビィ・ディックは、いま正に壊滅の瀬戸際に立っていた。王女フレイム率いる「蟻の部隊」も弾圧され、最早、戦争大臣の破壊と破滅を止めるものは何…

淡々と起きる怪異、爆速で恋仲になる前田敦子と成宮寛貴…ファスト映画小説の極み-『クロユリ団地』

『クロユリ団地』 脚本:加藤淳也・三宅隆太、ノベライズ:堀江純子/2013年/197ページ 介護福祉士を目指す二宮明日香は、引っ越してきたばかりのクロユリ団地でミノル少年と出会う。その晩、隣室からのノイズに苛立った明日香は、学校でクロユリ団地の悪い…

男女の心理的駆け引きは、傍から見れば恐怖にもなり得る。トレンディな香り濃厚なサイコホラー-『金曜日の女』

『恐怖小説集 金曜日の女』 森瑤子/1996年/234ページ 自分を捨てた男からの電話を、何年も電話の前で待ち続ける女。婚礼の前日、出会ったばかりの男と駆け落ちを企てる女。女たちの胸の奥底に渦巻く出口のない想いがえぐり出される。森瑤子の遺した傑作サ…

人の心を縛る呪いは怨霊よりも恐ろしい。「再読率100%」は伊達じゃない-『予言の島』

『予言の島』 澤村伊智/2021年/352ページ 初読はミステリ、二度目はホラー。この島の謎に、あなたもきっと囚われる。 瀬戸内海の霧久井島は、かつて一世を風靡した霊能者・宇津木幽子が最後の予言を残した場所。二十年後《霊魂六つが冥府へ堕つる》という―…

食品偽装、家族の認知症、早すぎた埋葬…恐怖の質が生々しすぎる厭話シリーズ第4弾-『忌談4』

『忌談4』 福澤徹三/2015年/208ページ 誰もが知る有名ブランドショップで封印された怪異(「九つの御守り」)。凄惨な事故現場、押し潰された車体から発見されたのは(「手」)。吐き気を催す食品偽装の実態(「よだれ肉と注水牛肉」)。SMバーで知りあった女の…