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悪趣味描写に光るものはあるが、予想を裏切らない展開に物足りなさも…-『戦争大臣 III 吸血博士』

『戦争大臣 III 吸血博士』

遠藤徹/2011年/371ページ

崩れる街、破裂する人、闊歩する獣人。世界連邦の雄モビィ・ディックは、いま正に壊滅の瀬戸際に立っていた。王女フレイム率いる「蟻の部隊」も弾圧され、最早、戦争大臣の破壊と破滅を止めるものは何もないように見える。…ただ一人、スナークを除いて。スナークは、戦争大臣である弟にもう一度会えるのか?黒き本の呪縛から解き放つことが出来るのか?戦争大臣の死への激情と、世界の生への愛情が激突する。驚愕のラスト。

(「BOOK」データベースより)

 

 三部作の完結編。アメリカがモチーフの大国「モビィ・ディック」でディズニー風のエレクトリカルパレードと共に大虐殺を行う辺りの悪趣味さや、異形の巨大昆虫「原蟲母」の妙に艶めかしい描写などに作者らしさを感じることができるが、まあ読み終えてみれば想像していた通りの無難な結末に落ち着いたといえる。

 身も蓋もないことを言ってしまえば、角川ホラー文庫の転換期において量産された「キャラクター重視、シリーズもの前提のラノベ風ホラー」の中に埋もれる1作でしかない。作者の持ち味を大幅に希釈した結果、確かに読みやすくはなっているが物足りない気はしてしまう。思い返せば、今ではおなじみの「異世界転生」をだいぶややこしい形で展開した1巻目の異形っぷりはなかなかのものだったが、そのインパクトとギミックを活かしきれていなかった印象だ。とにかく惜しいシリーズ。

★★★(3.0)

 

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