『完璧な家族の作り方』
藍上央理/2025年/304ページ
わたしもあなたも、完璧な家族、作れます。
新人賞に応募された小説作品「完璧な家族の作り方」。
角川ホラー文庫編集部は、著者のある目的のため、本作の書籍化を決定しました。※本作は、note主催・創作大賞2024〈角川ホラー文庫賞〉受賞作です。
(Amazon解説文より)
ホラー小説作家を目指す「私」は、○○○○創作大賞に応募する作品のため、北九州で起きたとある「家」にまつわる事件を調べ始める。黄色と黒の虎模様のロープで入り口を塞がれた「家」で、子供の頃に恐ろしい体験をしたという鷹村翔太に取材する私。彼と「家」との奇妙な因縁は、その後も、今現在も続いているのだという。
リアリティある作品づくりのため、私はなおも取材を続ける。かつて「家」で起きた凄惨な殺人事件。現在の「家」の所有者への取材。殺人事件の犯人である、宍戸篤の手記と彼へのインタビュー記事。「家」で姿を消した心霊系YouTuberのライブ放送。5ちゃんねるのオカルト板スレッド。調査を続けていくうちに、かつて「家」で起きた事件の真相が少しずつ明らかになっていく。そして、鷹村の前に何度も現れるという「家族写真」の正体も…。
完璧な家族に、なろう。
紹介文にも書かれている通り、noteの創作大賞2024〈角川ホラー文庫賞〉の受賞作品である。元になったnote記事『完璧な家族 首縊りの家』は現在も読むことができる。今回の文庫化にあたってかなり手が加えられているため、noteですでに読了済みという人でも終盤の展開は新鮮に感じるだろう。
いわゆるモキュメンタリーホラーとして再構成されているのが、note版からの大きな変更点。正直かなり食傷気味の手法であり、モキュメンタリーに寄せたおかげで文体が不自然に感じられる箇所も見受けられるが、本作が「大賞に選ばれた作者のデビュー作」であること自体をギミックに組み込んでいるのには感心した。単に流行りに乗っかっただけではない、note版があるからこそ活きてくる“一歩進んだモキュメンタリー”なのである。
アホアホ心霊YouTuberがお約束の目にあう辺りは盛り上がるし、書き手である「私」の素の部分が垣間見える終盤はかなりショッキングで良い。個人的に「ホラーとして」はnote版のほうが好みだが、文庫版の「こういう手もあるのか!」という読書体験も捨てがたい。あと表紙が最高。
★★★(3.0)

