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幽霊との結婚披露宴で行われる、最後にして最大の詐欺の行く末は?-『幽霊詐欺師ミチヲ3 時計仕掛けのファンタスマゴリア』

『幽霊詐欺師ミチヲ3 時計仕掛けのファンタスマゴリア』

黒史郎/2012年/346ページ

サカキとのゲームに大勝利を収めてしまったミチヲの背中に、めでたく戻ってきたマミコ。その愛情アピールは激しさを増し、今や披露宴を夢見る乙女となっていた。そんな中、カタリはミチヲに、溜まる一方の借金返済のため、その原因となった女・久米宮ユカリの霊から金を騙し取ることを提案するが…。ミチヲの運命は?カタリの真実とは?そしてマミコの儚い願いの行く末は!?今宵『首なし館』で一世一代の宴が始まる。

(「BOOK」データベースより)

 

 早くも最終巻、無駄なエピソードが無く濃密なシリーズ。お菊人形という新たな姿を手に入れるミチヲのほか、カタリの過去とミシェルとの因縁、ユカリとマミコ、2人に女性(死霊)との関係にけじめを付けるミチヲと、やるべきことをすべて終えた綺麗な幕引きである。サカキは尺の都合で消えた感があるけど。

 「擬葬結婚」では、ミチヲが自殺を図る原因となった結婚詐欺師・久米宮ユカリの霊と対峙する。いつの間にか死んでいたユカリをダシにして4億の慰謝料を巻き上げるべく、霊相手の美人局を仕掛けることに…。憎い相手であるはずのユカリの遺体を探し、成仏まで面倒を見ようとするミチヲはお人好しかつ主人公属性過ぎるが、こうした行動が上っ面だけに見えないのは、ひとえに彼の人徳によるものだろう。「ファンタスマゴリア」ではついにミチヲとマリコとの披露宴が開かれる。死人との婚姻は現世と別れを告げるにも等しい行為だが、借金を返し終えたミチヲにはすでに未練は無く…。一方でカタリは宿命の相手である死人殺し・ミシェルとぽんぽん丸を招聘、ミチヲたちを利用して彼らと決着をつけるべく策を練る。そして迎えた披露宴の夜、最大の詐欺装置・ファンタスマゴリアが因縁の時計館にて発動し…。

 テンポのいいギャグと予想不可能の展開が楽しい好シリーズであった。詐欺師になり切れず、真実を交えつつ相手に訴える真摯な態度ゆえ、結果的に幽霊相手の詐欺師として大成してしまうミチヲのキャラクターも大変よい。

★★★★(4.0)

 

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