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体中に爪が生える奇病にネイリストが立ち向かう! グロ描写はともかく主人公の掌返しが…-『デス・ネイル』

『デス・ネイル』

森山東/2006年/217ページ

ネイリストを目指す奈々子はボランティアで老人ホームを訪れ、かつ江という老婦人の爪を美しくマニキュアした。数週間後、かつ江が亡くなったという知らせとともに、遺品の眼鏡が奈々子のもとに届けられる。奈々子がその眼鏡をかけると不思議な映像が見え、奈々子を窮地から救い、導いてくれた。かつ江の眼鏡を武器に、一躍カリスマネイリストへの道を歩み始めた奈々子だったが―。日本ホラー小説大賞短編賞受賞作家の待望の作品集。

(「BOOK」データベースより)

 

 巻頭作「デス・ネイル」は‟全身に爪が生える奇病”というビジュアルのグロテスクさが印象的だが、キーアイテムとなる「おばあちゃんの不思議なメガネ」がどうにもアンバランスというか、作品の中で雰囲気が統一されていない気がする。ラストの主人公の心変わりも不自然。ネイリストたちの日常の描写が細やかで読ませる力作ではあるが、チグハグさは否めない。

 娘の同級生の、異様にセクシーな母親と課外キャンプへ行った主人公。クラスメイトの親たちから、彼女の数々の聞かされる…という「月の川」。怪異の正体はしてやられたという気持ちと、え? いきなり? という感じが半々。個人的にもっとも面白く読めたのは、修学旅行に来た女子高生が乗ったタクシーが実は…?という「感光タクシー」で、お約束の怪談かと思いきや二転三転する展開に感心させられる。少々ムラは感じるが、全体的に面白く読める短編集だった。それにしても表紙が怖い。

★★★(3.0)

 

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