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沖縄バカンス特別編かと思いきや、シリーズ随一の凶悪事件が発生!-『妖琦庵夜話 誰が麒麟を鳴かせるか』

『妖琦庵夜話 誰が麒麟を鳴かせるか』

榎田ユウリ/2019年/352ページ

ヒトと僅かに異なる存在、妖人。SNSで妖人差別発言を繰り返していた男が殺された。遺体には、刃物で刻まれた謎のメッセージ。刑事の脇坂は、被害者と関わりのあった妖人団体を訪ね、沖縄へ飛ぶ。捜査線上に浮かんだ宗教法人では、17歳の美少女が“麒麟”として崇拝を受けていた。けれど洗足伊織は、妖人・麒麟の存在をきっぱり否定、彼女が洗脳されている可能性を示唆し…。クライマックス直前!大人気、妖人探偵小説第7弾。

(「BOOK」データベースより)

 

 SNS等で妖人差別を繰り返していた連中がナイフで首を刺されて死亡し、「ジツニツマラヌバケモノハシンダ」と傷跡で刻まれる事件が連続して起きる。差別主義者から攻撃を受けていたNPO団体「妖人の権利を守る会」の代表者に会うため、脇坂と常盤は沖縄へと向かうが、代表の《キジムナー》仲村渠には完璧なアリバイがあった。東京に残る鱗田は同じく批難中傷を受けていた妖人団体、宗教法人「麒麟の光」を調査する。この団体で祀られているのは《麒麟》を自称する17歳の少女・宝來リンだった。とある目的のため沖縄の離島を訪れていた伊織は脇坂に助言を求められるが、伊織は妖人《麒麟》の存在を否定。言葉を発することを禁じられているというリンが、「麒麟の光」幹部である母親に洗脳されているのではないかと伊織は推察する。

 東京へ戻った脇坂は仲村渠の顧問弁護士・小鳩ひろむといい仲になる。リンを尾行していた常盤は、従者がいなくなった途端に往来で涙を流し始める彼女の姿に心を痛めていた。そんな中、「妖人を崇めるのは間違いだ」と主張するグループによってリンが誘拐される。突入犯とともに現場に駆け付けた常盤は、驚愕の光景を目の当たりにすることに。さらに「麒麟の光」を独自に追っていたひろむが轢き逃げに遭い、脇坂は激しく動揺する…。

 

 沖縄が舞台となるスペシャル編…のような始まり方ではあるものの、猟奇殺人が連続して起きたり、作中でもたびたび取り上げられてきた「妖人への差別意識」があらわになる展開、「愛」を徹底的に利用する黒幕など、シリーズ中でもかなりハードな内容である。「洗脳のプロセス」を事細かに語る何者かのモノローグも不穏極まりなく、事件解決かと思わせて二転三転するラスト数十ページの展開も素晴らしい。傑作巻揃いのこのシリーズだが、本巻は珠玉の出来だ。ここから物語は怒涛の最終章へと突入する! …はずである。

★★★★☆(4.5)

 

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