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映画版の監督・鶴田法男自身を語り手に据え、モキュメンタリー感を増した大胆ノベライズ-『POV~呪われたフィルム~ 赤いコートの女』

『POV~呪われたフィルム~ 赤いコートの女』

鶴田法男、酒巻浩史/2012年/248ページ

ある番組に送り主不明の動画が送られてきたことをきっかけに、2人の若手人気女優のまわりで次々怪現象が起きる。そして番組ディレクターが謎の失踪。のこされた映像に映っていたものとは…。志田未来、川口春奈が初のホラー映画でW主演。“ドキュメンタリー映画の制作過程”で起こる様々な戦慄体験を、Jホラーの巨匠・鶴田監督のルポルタージュ形式で綴った一冊。恐怖のサイドストーリー。

(「BOOK」データベースより)

 

 映画監督の鶴田法男のもとに、知人の橘直紀から映画の招待状とDVDが届く。「POV ~呪われたフィルム~」と題されたその映画のDVDはノイズだらけでまともに読み込むことができなかった。橘に連絡する鶴田だったが、彼の携帯から聞こえてくるのも「た・の・し・い…」とブツブツつぶやくノイズ混じりの声ばかり…。

 のちに、橘が失踪していることを知った鶴田監督。橘と最後に出会ったのは、「志田未来のそれだけは見ライで!」という携帯向け番組でホラー特集を企画した時だった。聞けば「POV ~呪われたフィルム~」にも、「それだけは見ライで!」の出演者である志田未来と川口春奈が関わっていたという。

 ふたりに話を聞いた鶴田監督は驚愕の事実を知る。橘はホラー映像を撮るため、志田未来と川口春奈、そして岡崎と名乗る霊能者を連れて春奈の母校である中学校へ行ったのだという。そこで「何か」が起きたため岡崎は負傷、ADだった北川は今も入院したままだという。中学校でいったい何が起きたのか? 鶴田監督たちの前にたびたび姿を現す赤いコートの女の正体は? そして橘はどこへ消えたのか? 真相を解き明かすため、鶴田監督はくだんの中学校へと向かう…。

 

 原作は志田未来と川口春奈が本人役で主役を演じ、鶴田法男が監督した『POV ~呪われたフィルム~』。POVと付いていることからわかる通り、主観画像で撮影されたモキュメンタリーホラーである。このPOVという文章化困難なギミックに対し、ノベライズでは監督の鶴田法男本人を語り手にするという大胆な手法を用いている。「映像を通じて広まろうとする呪い」という、貞子チックな呪いに対して鶴田監督はどういう対抗策を取ったのか。なぜ映画『POV ~呪われたフィルム~』は公開されたのか…という、幾重ものメタな展開はなかなか独創的で面白い。本ノベライズ最大の問題点は「怖くないこと」で、映像のショッキングさにまったく迫られていないのが惜しい。中盤の一部分は筋を淡々と消化している感が強く、鶴田法男の主観という印象も薄い。志田未来と川口春奈ファンには確実に刺さるだろうが…。

★★(2.0)

 

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