『メデューサの首 微生物研究室特任教授・坂口信』
内藤了/2024年/336ページ
女刑事×微生物学者のタッグがテロリスト集団を追う、驚愕のサスペンス!
微生物研究者の坂口信は、恩師が遺したウイルスを大学の保管庫で発見する。
それはインフルエンザの感染力と狂犬病の致死率を持つ脅威の殺人ウイルスだった。
ワクチンはなし、感染すれば凶暴化した後に自らをも喰らって死ぬ。
即刻処分を決めるも一部が何者かに奪われ、全国民が人質の地獄のゲームが開始されてしまう……。
テロリストの目的は何なのか? 坂口は毒舌女刑事・海谷と共に犯人の行方を追う! 驚愕のシリーズ第1弾。
(Amazon解説文より)
微生物研究社にして医大の特任教授、坂口信(65歳)は、かつての恩師・如月教授から遺されたノートを基に、大学の保管庫で凍結保存されたウイルスを発見する。KSウイルスと名付けられたそれは、狂犬病の致死率とインフルエンザの感染力を持つ生物兵器だった。しかも患者は仮死状態に陥ったのち、目の前で動くものすべてに食らいつく凶暴性を発揮するという…。脅威のゾンビ・ウイルスの実態を知った坂口は、助教授の二階堂と准教授の黒岩に、ただちにウイルスを処分するように伝えた。
しばらく後。身内の不幸もあり、しばらく大学を離れていた坂口は、結婚したばかりだった黒岩が急死したことを知る。さらに警視庁の女刑事・海谷が現れ、黒岩の死の不審な状況について調べていると伝える。黒岩の口座に1億円の振り込みがあったこと、黒沼の新居から元妻が姿を消したこと、さらには処分したはずのKSウイルスの一部が紛失していることが判明した。坂口、二階堂の頭に浮かぶ最悪のシナリオ。そして正体不明の組織が電波ジャックを敢行し、爆発物と共にゾンビ・ウイルスを仕掛けたと宣言する…!
主人公・坂口は地味な高年齢男性で、妻がいなければ洗濯機の使い方も米の炊き方もわからないという仕事人間である。なんとも華のないキャラクターだが、読み進めていくうちにだんだん魅力を増していく。全人類存亡の危機になりかねない状況で重責を負う羽目になり、苦悩しつつも己に出来ることを果たすため奮闘する坂口教授。持ち前の知識と研究心、海谷や大学関係者たちのサポートで真犯人とウイルスの行方を追い詰めていき、年を感じさせないアクションシーンも披露したりする。ホラーというよりは純サスペンスドラマで、黒幕の行動も目的も二時間ドラマ的なスケールを感じさせてしまうが、素直に楽しめる一作。続編がどういう形で展開していくのかは興味深い。海谷刑事に大学の守衛‟ケルベロス”の面々、お気楽なタイ人学生・チャラ君辺りはレギュラーに落ち着きそうな雰囲気。
★★★(3.0)