『NIGHT HEAD/未来』
飯田譲治/2000年/668ページ
双海芳紀の肉体が崩壊し、意識の力で霧原兄弟に伝えた謎の言葉「ミサキデマツ」。その言葉は何を意味するのか?一方、ARKの奥原晶子は桐華高校に通う天元早紀枝に近づく。早紀枝は自分の感情をまわりに感染させる力を持っているのだ。彼女の本来の力を覚醒させ、その力を利用しようとする奥原を阻止するため、兄弟はARKに最後の戦いを挑むが…!?直人と直也の行き着く先は?そして、人類に“変革”は訪れるのか?壮大なスケールで描くサイキック・ホラーの金字塔「NIGHT HEAD」堂々の完結。
(「BOOK」データベースより)
劇場版にあたる完結編・第六部(前巻は第四部で終わっていたので、第五部の間違いだと思われる)と、外伝となる短編集「DEEP FOREST」を収録。小説『NIGHT HEAD』シリーズにはもう1冊、アニメ版「NIGHT HEAD GENESIS」の終盤エピソードにあたる『NIGHT HEAD 誘発者』があるようだ。
ARKを裏切ったため排除された予知能力者・都築洋介は、霧原直人と直也の兄弟にメッセージを残していた。都築が教師として潜入していた高校には自分の感情を周りの人間に伝染させる能力者・天元早紀枝がいた。ARKの首魁・奥原晶子はその野望のため、早紀枝の能力を求めている…。都築の残留意思、そして電脳世界の住民となった双海芳紀に導かれ、兄弟は早紀枝のもとへと向かう。
いじめを受け希死念慮に捕らわれていた早紀枝は自殺を図るが、能力に巻き込まれたいじめ首謀者たちだけが死亡。だがそれはARKの刺客、マインドコントロールの使い手である三雲の仕業だった。両親にも疎まれるようになった早紀枝に甘言を弄し、ARKに引き入れようとする奥原は、三雲に命じて早紀枝の妹の殺害。三雲はさらに直人に手をかけ、彼を精神崩壊へと追い込む。ただひとり残された直也に、新たな力が目覚めようとしていた…。(第六部)
兄弟がまだ超能力研究所にいたころの話。直人19歳、直也13歳の夏。御厨の親戚だという成美、佳、茜の三姉妹が研究所を訪れる。だが優雅な成美、快活な佳はその美しい外見とは裏腹に、末っ子の茜に対し執拗ないじめを行っていた。心を痛める直也だが、何者かが直人の殺害を目論んでいたことを知り、能力者の存在に気づく….。(DEEP FOREST 1)
直人22歳、直也16歳の秋。直人は研究所近くの森で気さくな大学生・赤坂聖司と出会う。直也が犬のハリィに夢中な折、心の奥底で普通の「友人」を求めていた直人にとって、同年代の人間との出会いは嬉しい出来事だった。だが聖司を追ってやって来た彼の友人・道隆が不穏な事実をもたらす。聖司はなんらかの罪を犯してここへやって来たのでは…? 直人にほのかな好意を寄せる研究員・友枝麻理子は彼の心の支えになろうとするが…。(DEEP FOREST 2)
ARKとの戦いを終えたのち、直人と直也は懐かしい研究所跡を訪れる。すでに更地となっていたかの場所には、都会を離れて暮らす人々のコミュニティが出来上がっていた。コミュニティの一員にして予知能力者の陽子は、いずれ自分が人々を導く救世主となるビジョンを見た直也が思い悩んでいることを見抜き、彼に助言を与える。だが直也が新たに得たヒーリング能力を発揮しようとした時、思いもよらない障害が直也を阻む。(DEEP FOREST 3)
長い旅路の果てに「救世主」となることを運命づけられた兄弟。少年漫画のようなエスカレートぶりだが、決してチープにならない説得力を持たせた展開である。ひとまずの最終巻としては文句のない出来。振り返ってみれば、やはりすべての始まりとなった「常識酒場」のパートが群を抜いて面白かったように思う。
★★★☆(3.5)