『魔女調伏師(ヘクセンバナー)は闇に笑う』
篠原美季/2016年/258ページ
ニコラス・理人・リューディガーは金髪碧眼の美青年。見た目は異国の王子様だが、中身は傲岸不遜な“魔女の専門家”だ。旧友の臨床心理士・都月玲李を訪ねたリヒトは、レイがある殺人事件の捜査に関わっていると知る。被害者は占い師。犯人は、邪悪な魔女を殺したと話しているという。リヒトは専門家として、強引に協力を申し出るが!?現代の魔女の謎を解く、オカルト・ミステリ開幕!
(「BOOK」データベースより)
占い師の井出一美が殺害された。加害者の男性・芝浦飛馬は「自分は悪い魔女を殺したのだ」と支離滅裂な主張をしているという。刑事の轟は臨床心理士の都月玲李(レイ)に相談するが、芝浦には虚言症の兆候は見られなかった。魔女というキーワードから、レイはドイツ帰りの旧友、ニコラス・理人(リヒト)・リューディガーを轟刑事に紹介する。理人は魔女に関する専門家である。そしてレイも知らない事実だったが、理人は魔女退治を請け負う魔女調伏師(ヘクセンバナー)でもあったのだ。
井出一美が呪術で殺人を請け負っていた魔女であることが判明するも、謎はまだ残っていた。芝浦はなぜ井出が魔女であることを知ったのか。井出の家から持ち出された書物「第六の鍵」の行方は? そして井出の呪殺対象であり、理人の前任だったヤンの安否は。こうした謎の多くは次巻へと持ち越されることになったのだった…。
超自然的な魔法を使いこなすような魔女は出てこず、あくまで「人心を操る邪な存在」としての魔女が出てくるミステリである。いわゆる「魔女狩り」のイメージに陥らないよう工夫されている感はあり、実際に理人が魔女を‟退治”するシーンは現代的かつなかなか格好良い。
魔女関連のうんちくは流石に面白いのだが、せわしない視点変更や取材不足感が見える精神科や警察描写がノイズでのめり込みにくい。リヒトが「俺様な魔女の専門家」らしい顔を見せるのが、本書の半分である120ページを過ぎてようやくといったスローモーな展開ももったいない。しかも理人が毒舌を吐くのはたいてい轟刑事に向けてのみであり、俺様系王子というより単に警察が嫌いな人という印象である。続刊とまとめて読まないとお腹に溜まらない感じ。
★★☆(2.5)