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手首の腱で斬りあう能力者バトルはどうにも地味だが、奇抜な設定は読みごたえあり-『心臓狩り ②シャーマンの一族』

『心臓狩り ②シャーマンの一族』

梅原克文/2011年/289ページ

心臓移植により、臓器提供者の記憶だけでなく、手首の長掌筋腱が体外に飛び出し、“触手”や“刀”に変化する謎の力まで受け継いでしまった雅之。事態の真相を知るべくドナーの正体を探った雅之は、やがて美しい女性・舞と出会う。彼女はドナーだった優人の親戚で、シャーマンと呼ばれる不思議な力をもつ一族のひとりだった。さらに一族の異端者・秀人が、彼らの命を狙ってくる。シャーマンの力に目覚めていく雅之の運命は―。

(「BOOK」データベースより)

 

 シャーマンと呼ばれる一族の心臓を移植されたことにより、シャーマンと同等の力――手首から腱を伸ばして剣に変えたり、他人の心臓から記憶と才能を奪い取ったりといった能力を得た主人公。人間の心臓を狩るシャーマンはいわゆる吸血鬼、〈羅刹〉として忌み嫌われていた。自分と同じく移植によって羅刹と化した男を追うため、主人公はひとつの決断をする…。

 手首からピンク色の腱を伸ばして斬りつけあうシャーマン同士のバトルは「グロさに比例して絵ヅラも地味になった『寄生獣』」みたいでどうもビジュアル的に映えない。とは言え、人間より少しだけ進化したシャーマンという存在自体に「神」の介入を感じる辺りなど、突飛な設定に説得力を持たせる過程はなかなか読みごたえがある。前巻のラスト(家が吹っ飛ぶ大爆発)からそのまま開幕し、爆破跡で主人公とヒロインが80ページにわたって延々と設定を語り合う場面は難儀するが…。

★★★(3.0)

 

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