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妄執が生んだ忌まわしき花嫁。実話怪談というジャンルを一段上のステージに引き上げた傑作-『拝み屋怪談 花嫁の家』

『拝み屋怪談 花嫁の家』

郷内心瞳/2022年/384ページ

「嫁いだ花嫁が3年以内にかならず死ぬ」――。

忌まわしき伝承のある東北の旧家・海上家では、過去十数代にわたり花嫁が皆若くして死に絶えていた。
この家に嫁いだ女性から相談を受けた拝み屋・郷内は、
一家に伝わるおぞましい慣習と殺意に満ちた怪奇現象の数々を目の当たりにする……。

記録されることを幾度も拒んできた戦慄の体験談「母様の家」と「花嫁の家」。
多くの読者を恐怖の底へ突き落とした怪談実話がついによみがえる。

(Amazon解説文より)

 

 2編の連作を収録。「母様の家、あるいは罪作りの家」は、拝み屋稼業を営む著者が受けた奇妙な依頼に関する数々のエピソードと、とある家に嫁いだ女性の昭和時代からはじまる恐怖の体験談が並行して語られる。とある依頼人をきっかけで、一連の怪奇現象に「母様」なる存在が関わっていることを知る著者だったが、あまりに凶悪、かつ強大な母様を巡ってついに犠牲者も出てしまい…。拝み屋怪談シリーズの長編は実話怪談とはまた異なるエンタメ作品として読んでいるが、この「母様の家」ば各章の1話1話を実話怪談として楽しめるのがミソ。同時に、それらのエピソードのとある共通点が判明する展開に驚愕させられる。「花嫁の家、あるいは生き人形の家」は、上記の解説文にある「花嫁が3人い兄にかならず死ぬ」家に関するエピソード。死者の怨恨、それよりも怖い生者の妄執に心冷えるたいへん厭な話であり、これまたストレートに怖い。

 

 本書はMF文庫ダ・ヴィンチで刊行されていた、シリーズ2冊目の作品を復刊したもの。帯には「本書がいかに怖いか」を語るそうそうたるメンバーのコメントが載っているが、怖い以上に「実話怪談」というジャンルを一段上のステージに引き上げた傑作という印象が強い。「母様の家~」はちょっと盛ってる感があるものの、主人公=作者の行動をヒロイックにし過ぎないバランス感覚には感心する。

★★★★☆(4.5)