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「シリーズものは巻数を重ねるごとに質が落ちる」と作者がボヤき始める第3弾-『忌談3』

『忌談3』

福澤徹三/2014年/208ページ

社内で起きた盗難事件、深夜に現場を撮影したビデオは封印された(「持ち禁」)。売れないキャバ嬢を大金でホテルに誘った客の正体は?(「実験」)。なぜかからみを厭がるAV女優、監督は撮影を強行したが…(「雨女」)。サクラで出席した結婚式、新婦の過去は空白だった(「虚式」)。訪問販売員が民家で見つけた謎の印が恐怖を呼ぶ(「マーキング」)。思わず本を閉じたくなる、忌まわしい話シリーズ第3弾!

(「BOOK」データベースより)

 

 このシリーズは巻頭に作者の「まえがき」という名のボヤキが入るのが恒例となっていて、その切実な内容が妙に面白い。「シリーズものは、巻を重ねるごとに質が落ちていく傾向にある。その原因の多くはネタ切れで、著者自身も不本意な話を掲載するせいだろう」などと身もフタもないことを書いてしまっている。
 怖さという点では前2冊には及んでおらず、多少のパワーダウンは感じなくもないが、相変わらずすらすらと読める絶妙な語り口。いつも笑顔を絶やさない少年のひたすら遣る瀬無く悲しい話「笑顔の理由」、水道から糸ミミズが溢れでる「赤い水」など、厭な話はとことん厭である。悪意もなにも無いのだろうがとにかく不気味な「岩跳び婆」、訪問販売員が表札付近に印を付けていく…というよく聞く話から急転直下する「マーキング」など、実話怪談風の話も悪くない。

★★★(3.0)

 

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