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奇作ぞろいの曲者作家がラノベを書くと、何故か週刊少年チャンピオンの雰囲気に-『戦争大臣 I 嘲笑する虐殺者』

『戦争大臣 I 嘲笑する虐殺者(ニーズヘッグ)』

遠藤徹/2011年/331ページ

地球儀から消された国は、世界に宣戦布国する。致死性ウイルスが死の嵐を招いた世界。国家Jは患者の隔離所にされるが、憎悪を糧に生き延びた。ウイルスを克服した英雄は戦争大臣を名乗り、この世の殲滅に動く―「お前は大臣じゃない!俺の弟だ!!」西塔寛一には完璧な弟・颯がいたが、“断罪者”を名乗る男達に襲われ失踪してしまう。行方を追う寛一の前に黒い本を携えた1人の男が現れ…。最強ダークファンタジー開演。

(「BOOK」データベースより)

 

 40代以降はバタバタ死に、生き残った人間も獣人化&特殊能力を得てしまうウイルスが蔓延。感染者は島国Jに隔離され、J国は世界から見捨てられてしまう! 生き残ったJ国の人間は若き“戦争大臣”のもと、獣人&特能者を率いて敵国のサイボーグや超能力部隊と戦う…という、ファンタジーとSFとバイオレンスをまぜこぜにした「1990年前後の週刊少年チャンピオン連載作品」のようなお話。前日譚として、サッカー大好きイケメンな弟・楓と、その弟に心酔する兄・寛一の話が挟まれ、この楓がのちの戦争大臣らしいことが示唆される。この前日譚も「サッカー大会の前日、暴力的な対戦校に仲間をさらわれ、助けに行った楓がリンチにあって脚を怪我してサッカー選手としての生命を絶たれてしまう」というもので、これまた少年マンガ感のあるエピソードである。

 全3巻の1作目で、非常にサクサク読めるライトな1冊。戦争大臣の護衛は「7人のセーラー服少女」だし、登場人物の二つ名も吸血博士(ドクトル・バンピイル)だの天鵞絨の死(ベルベット・デス)だの恥ずかしいモノばかりだし、わかっててやってる感のある厨二センスが爆裂している。これが『姉飼』『壊れた少女を拾ったので』の遠藤徹かと思うと少々意外な気もするが、氏のファンであればただただ残虐なクソガキ連中の大暴れにも手を叩いて喜べるのではなかろうか。

★★★☆(3.5)

 

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