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正しく中二病な残酷寓話。あまりにストレート過ぎる怒りがスれた大人の胸を打つ-『D-ブリッジ・テープ』

『D-ブリッジ・テープ』

沙藤一樹/1998年/167ページ

近未来の横浜ベイブリッジは数多のゴミに溢れていた。その中から発見された少年の死体と一本のカセットテープ。そこには恐るべき内容が…斬新な表現手法と尖った感性が新たな地平を拓く野心的快作。第4回日本ホラー小説大賞短編賞受賞作。

(「BOOK」データベースより)

 

 ゴミに埋もれた橋のたもとに捨てられた少年が、生き抜くために独りサバイバルを開始。野良猫や鳥や虫を喰らい、大怪我した右脚は自分で切断し、侵入者がいれば鉄パイプを振り回して撃退する。そんな彼の限界生活も、自分と同じく捨てられた盲目の少女と出会ったことで急変し…。

 少年がカセットテープに吹き込んだ壮絶な自叙伝と、オフィスビルの会議室でテープを聞く大人たちの冷ややかな反応が交互に描写される(ほぼ会話文なので異様にスラスラ読める)。ところどころグロテスクな描写はあるがリアリティは薄く、平山夢明が描く残酷な寓話に近い感触。全編を圧倒的な怒りと疾走感が占めており、ド直球の「若さ」が溢れている。厨二病…というと失礼かな、正しく「中二病」であり、わりとマジで中学生のうちに触れていたら大きな感銘を受ける作品であろう。「エンドルフィン」というタイトルで舞台化されているが、少々ゴタゴタがあった様子。

★★★(3.0)

 

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