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霊能者様のおかげで娘が助かりました! というだけの話をどう楽しめというのか-『霊能者』

『霊能者』

髙橋三千綱/1993年/373ページ

心理学者の川島はロサンゼルスの霊能者から五歳の娘亜里の危険を予感させる不吉な霊視を受けた―。
その直後、亜里の突然の失踪を知った川島は急遽帰国し、その行方を追うが…。
闇の世界に引き込まれた少女救出のため、悪霊蠢く戦慄の館で、霊能者たちの死闘が始まった!
海外取材を基に著者が初めて挑んだ衝撃の異次元小説!

(裏表紙解説文より)

 

 佐藤有文や冝保愛子の本を参考文献に書かれた、著者初のオカルト小説とのこと。前半は大学の超自然現象研究会であるエリと広美がロサンゼルス旅行へ行き、オカルト大会に出席して「透視? すごーい!」「霊視? ギョエーすごい!!」と驚くだけで終わってしまう。中盤からはエリたちと共にオカルト大会に来ていた心理学者・川島が急に主人公となる。霊能力者が5歳の娘・亜里に不吉な影が迫っていると予言された川島は、亜里が友達の女の子と共に行方不明になったことを知り、急遽帰国する。亜里たちの行方を調べているうちに日本の霊能力者、ロスから応援に来た霊視者や神学者、あと刑事やら空手をやってるアンちゃんやらといった仲間がどんどん増えていき、川島たちは横浜の妙な屋敷へカチコミをかけるのであった。そこには悪魔教信者やら悪霊やらがいたのでやっつけたのであった。

 超能力に霊視に黒魔術に白魔術と、さまざまなオカルトを節操なくごった煮にした印象。登場人物らがエビデンス不明の霊言をありがたがって拝聴し、あっちへ行ったりこっちへ行ったりするだけの話なので面白みに欠ける。霊能者が聖人なだけの小説って、どういう顔をして読めばいいのかわからない(逆に言うと霊能者がヒドい目にあったり、ひねくれ者や悪人だったりする小説は面白い)。当時のオカルト事情を知る資料のひとつとしては興味深いかもしれないが、ホラー小説としてオススメはしない。「来たれよサタン!」とか騒いでいる悪魔崇拝者が普通に空手キックで倒されるところは面白かったです。

★★(2.0)

 

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