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記憶に囚われた過去から未来へと踏み出す、前向きで爽やかな青春モノ-『記憶屋Ⅲ』

『記憶屋Ⅲ』

織守きょうや/2016年/237ページ

高校生の夏生が、4年前に巻き込まれた集団記憶喪失事件。「記憶屋」の関与を疑う新聞記者の猪瀬に頼まれ、夏生は記憶屋探しに協力していた。だが、手掛かりとして接触した料理人の男性の記憶が消えてしまい、猪瀬は夏生の親友・芽衣子への疑いを強めることに。夏生はこれ以上記憶屋に近づきたくないと訴えるが、その矢先に猪瀬と一緒にいるのを芽衣子に見られてしまい…。記憶屋をめぐる、衝撃の真実がついに明かされる。

(「BOOK」データベースより)

 

 前巻『記憶屋Ⅱ』の直接的な続編。記憶屋と会ったものの、消された記憶が蘇ったという料理人・毬谷柊にコンタクトを取る夏生と猪瀬。記憶屋に消された記憶は決して元に戻らないはずではなかったのか? ライバル関係にある料理人と自分の不都合な記憶を消してもらいたがっていた毬谷だが、彼の事情は他の記憶屋接触者とは少々異なっていた。調査は進み、最終的な容疑者は絞られていく。最終的に夏生が出した「答え」とは…。

 

 ラストで『記憶屋』1作目のキーパーソンが登場し、最終的な謎はすべて明らかになる。ミステリとしての意外性は弱いものだが、この前向きで爽やかな結末に抱く印象は1作目とはまったく異なるもので、これはこれで悪くない。この『Ⅱ』と『Ⅲ』、恐怖度はゼロに近いし1作目以上に男性同士の濃厚な絡み(※精神的な)はあるし、ガチなホラーを求める向きよりは、あくまで1作目を気に入った人向けの続編である。いきなり『Ⅱ』や『Ⅲ』から読む人はあまりいないだろうが。

★★★(3.0)

 

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