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親友の正体は都市伝説? もうひとつの記憶屋の物語-『記憶屋Ⅱ』

『記憶屋Ⅱ』

織守きょうや/2016年/272ページ

高校生の夏生はかつて、友人達と一斉に、記憶を失うという不可解な経験をしていた。夏生を訪ねてきた猪瀬という新聞記者は、それは彼が追っている「記憶屋」の仕業だという。忘れたい記憶を消してくれる、記憶屋。夏生は、その行為が悪いことだとは考えていなかった。だが記憶屋の正体が親友の芽衣子ではないかと疑われ、夏生は彼女の無実を証明するために猪瀬の記憶屋探しに協力するが…。切ない青春ミステリ、待望の続編。

(「BOOK」データベースより)

 

 大崎夏生と上倉芽衣子は4年前、友人らと同時に「とある記憶」を失うという奇妙な体験をしていた。夏生に接触してきた新聞記者・猪瀬桔平は、夏生を含む友人らの中に「記憶屋」がいた可能性を話す。児童への性犯罪の前科があった学校近くのパン屋の店員がすべての記憶を失い廃人となったのも、店員に猥褻行為を受けトラウマになっていた夏生らの友人がそのことを完全に忘却していたのも、すべて記憶屋のしわざではないか。

 夏生と猪瀬は共に調査を始め、夏生の学校の大学部に在学している学生モデル・片山莉奈に話を聞く。莉奈は記憶屋と会ったことも、自分が何の記憶を消してもらったかということも自覚している稀有な人物だった。双子の新人アーティスト「cyan」の森下青、森下緑と親しかったことをなぜかすっかり忘れてしまっていた莉奈。記憶屋のことを知った莉奈は、自分がなぜこんなに素敵な2人組のことを忘れようとしていたのか探るため、再び青・緑の兄弟と交際を始めるのだが…。

 

 前作『記憶屋』とは登場人物が一新されており、おそらく今回の「記憶屋」は前作の「記憶屋」とは別人であろうことが示唆されている。本作だけでは話は完結しておらず、物語は『記憶屋Ⅲ』へと続く。前作の様な衝撃的なラストがあるわけではなく、猪瀬と夏生の「人の記憶を消すことは悪なのか?」という問答も前作の焼き直しに近い。次作とセットで続けて読むべきだろう。それにしても自称クリエイターの「cyan」とやら、完璧すぎていけ好かない連中だなあ!(遠吠え)

★★★(3.0)

 

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