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中年男が花の妖精たちとガーデニング生活。どこがホラーなの???-『ホワイトハウス』

『ホワイトハウス』

景山民夫/1997年/202ページ

ルポライターの斉木は小説家への転進を決意し、那須の山荘に移り住んだ。渓流と広葉樹に囲まれた白壁の洋館。広いサンルームとブルーベリーが生け垣を作る庭は大きな魅力だ。園芸店の女店員のアドバイスを受けながら、花や樹木と親密に過ごす生活。東京暮らしに疲れた斉木にとっては、願ってもない仕事場であった。この家に封じ込まれた呪われた過去が明かされるまでは…。本邦初!前人未踏のガーデニング・ホラー小説。

(「BOOK」データベースより)

 

 ルポライターの斉木は小説家を目指し、静かな環境に囲まれた那須の山荘に移住する。ホワイトハウスと名付けた新たな仕事場で、渓流を散歩したり薪ストーブを焚いたり、牧場で新鮮な食材を手に入れたりガーデニングに興じたりと、山での生活を大いにエンジョイする斉木。しかも山荘には彼が植えた花の妖精が現れ、サラマンダーやノームやシルフなどもやって来て食事の準備や部屋の掃除も手伝ってくれる。たまにワープロの画面が「死」の文字で埋め尽くされたりもしたが、妖精が見える花屋の店員と協力して電磁波をアレする悪霊を退治したので大丈夫だった。完。

 

 角川ホラー文庫の景山民夫作品は長編・短編問わずどれも酷い。描写の巧みさはさすがであり、いかにもな舞台を作り上げるのは非常にうまいのだが、その文章力がホラー方面にはまったく活かされていない。なんとももどかしい。

 前人未到のガーデニング・ホラー! などと謳っているが、トンガリ帽子の子供の姿をした妖精と同居するのはホラーではなくファンタジーではないだろうか。無害な存在に見せかけておいて実は…! というオチもなく、本当に普通の妖精さんなのである。確かに怖さに重きを置いていないほのぼのホラーというのもあるが、そういう方向を目指しているようにも見えない。斉木が山奥の一軒家で隠れ家ライフを満喫している描写は実に楽しそうで、本作の大きな魅力なのだが、そこにトンガリ帽子の妖精さんが介入してくるのは「楽しい」でも「怖い」でもなく、シンプルに「邪魔」ではなかろうか。

 いちおうラストはなんとなく邪悪な存在が出てきて、全身にアルミホイルみたいなのを撒いて対抗するのだが緊迫感は皆無である。いい加減にしていただきたい。

★☆(1.5)

 

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