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拝み屋オールスターVS怨念と因縁深き‟壊れた家”! シリーズ最終章前編-『拝み屋怪談 壊れた母様の家〈陰〉』

『拝み屋怪談 壊れた母様の家〈陰〉』

郷内心瞳/2019年/288ページ

昔、ある人が言った。呪いや祟りに期限など存在しないと。またある時、別の人がこう言った。人は自らの意思で、願いで、欲望で、神を造りあげることができるのだと――。10月半ば、拝み屋を営む著者の許に、電話で一件の相談依頼が舞い込んだ。依頼主は高鳥謙二。謙二は11年前、大きな災いにまつわる相談をしてきた女性で今は亡き、高鳥千草の元夫だった――。全てが終わったはずの忌まわしき災禍が、再び息を吹き返す……。

(「BOOK」データベースより)

 

 「拝み屋怪談」シリーズの集大成であり、最終章となる作品(実際はもうちょっとだけ続くが)。少なくとも『拝み屋怪談 花嫁の家』は事前に読んでおくことをおすすめする。
 「母様の家」にまつわる一連の事件で、著者が救うことができなかった女性・高鳥千草。千草のかつての夫・謙二に相談を受けた著者は、千草と謙二の娘・美月に千草の霊が憑依していることを知る。千草の最後の心残りは、かつて暮らしていた家をもう一目見たいというものだった。除霊を決行しようとする著者だったが、当の「家」にはこれまでとは比較にならないほどの災禍が待ち受けていたのだった。

 

 先輩の拝み屋・華原、師匠である水谷、占い師の小夜歌、霊能師の美琴、因縁深き魔青年・芹沢真也といった著者の知り合いに加え、本作のマスコットとも言える蛇神(か何か)のシロちゃん、シロちゃんの飼い主である不幸体質の女性・佐知子、シロちゃんを神として崇めるその母親・弓子、美月の除霊を引き受けようとするいけすかない拝み屋・深町、存在しない姉「清美」に取り憑かれた少年、まっとうな拝み屋・浮舟桔梗、佐知子に接近する謎の団体・マダム陽呼&マダム留那呼とその一行といった新顔キャラクターが登場。登場し過ぎでは。美月の写真を顔に張り付けた不気味な女、警告を告げるかのように現れる漆黒のワンピースを着た女といった怪異も出現する。幾多のエピソードが収束する先に浮かび上がる「家」には、果たして何が待ち受けているのか…? といったところで前編である本作は終了する。

 実話怪談のテイでスタートした「拝み屋怪談」シリーズも巻を重ねるごとにスケールアップ、まるでモキュメンタリーホラー『コワすぎ!』を見ているかのようだ(あちらほどはっちゃけてはいないが)。個々のエピソードの切れ味は鋭く、人の善なる想いと浅ましい醜さを描き出す筆力には唸らされる。

★★★★(4.0)

 

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