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猛吹雪に覆われ孤立する高層ビル! 殺人鬼から逃れる唯一の脱出路とは?-『マンハッタン魔の北壁』

『マンハッタン魔の北壁』

ディーン・R・クーンツ/1993年/365ページ

女の喉から血がほとばしる。ナイフがむきだしの乳房の間に突き刺さる――グレアム・ハリスは鮮明にその映像を見た。
かつては世界的な登山家だったグレアムは、転落事故のショックで透視力を得た。グレアムはテレビ番組で連続殺人犯を透視したのだ。殺人鬼は唯一の“目撃者”グレアムを狙う……。
奇才クーンツが描く戦慄のホラー・サスペンス。

(裏表紙解説文より)

 

 登山家のグレアム・グレイはエヴェレストで90mの断崖から落下する事故を起こし、多大なトラウマと脚の障害を負ってしまう。さらにグレアムはこの事故により、「殺害される人間の運命」を予測する力も得ることになる。テレビ番組に出演中のグレアムは、世間を騒がす連続切り裂き魔の被害者のビジョンを透視。殺人鬼ボリンジャーは相棒のビリーと共に、邪魔なグレアムを恋人のコニーともども始末する計画を立てる。

 猛吹雪に覆われたマンハッタン。グレアムは高層ビル40階のオフィスで、コニーと共に徹夜仕事をしていた。ビルに侵入したボリンジャーは警備員を殺害、電話線と非常ベル、エレベーターを止めグレアムたちを孤立無援の状態にする。自らが背中から銃撃されるビジョンを見たグレアムはコニーを連れてビルから脱出しようとするが、どこにも逃げ場はない。唯一の手段は、オフィスに残された登山道具を使い、ビルの外壁を降りることだった。この猛吹雪の中、登山経験のないコニーを連れ、40階の高さを無事に降りることが果たしてできるのだろうか…?

 

 スティーヴン・キングと並ぶモダンホラーの二大巨頭、ディーン・R・クーンツがブライアン・コフィ名義で出した作品。超能力サスペンス、ミステリ、クライムアクション、サイコスリラー、冒険小説といった数々の要素を内包したサービス精神には恐れ入るばかり。いくつかのアクションシーンはどちらかと言うと映像向きで、実際映画化もされている(邦題『処刑ハンター』)。クライマックスのビル降下シーンも専門用語が多く、登山経験のある読者でなければピンと来ないかもしれない。

 人物描写は非常に巧みで、主人公以上に聡いコニー、被害者役のヌードダンサーにやたら悲観的な刑事、意地の悪いテレビ司会者に自らを超人とうそぶく殺人鬼と、いずれもキャラが立っている。自らを優勢種と信じる天才気取りの殺人鬼・ボリンジャーは、グレアムたちに終始翻弄されっぱなしで途中から気の毒になってくるほど。エピローグ直前のどんでん返しもいいスパイスになっており悪くはない作品だが、やはり映像向きの題材ではないかという気がする。

★★★☆(3.5)

 

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