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あまりに大味なうえ赤ずきん関係ない呪い話だが、意地の悪いエピローグは最高-『赤ずきん』

『赤ずきん』

吉村達也/2010年/352ページ

女子大生の夕紀は、ある日突然頭の中に響く声を聞いた。それはひとりの女の子の家庭教師をしろという命令。訪れた一軒家には常軌を逸した姿の赤ずきんが待っていた!そして夕紀に襲いかかる数々の幻影。だが、それらは忌まわしい過去の惨劇の実像だった。10人が赤ずきんの呪いにかかることが予告され、次々に犠牲者が…。そして復讐の背景にある悲劇が見えたとき、最後のひとりに、驚愕の結末が待ち受けていた。

(「BOOK」データベースより)

 

 主人公の水沢夕紀は、人里離れた山奥の家で家庭教師のアルバイトをすることになった。だがそこで待っていたのは赤ずきんの格好をした老婆だった。歯をむき出し唸り声をあげ、狼のように夕紀に噛みつく赤ずきん…。

 夕紀と同じ大学で心霊研究会のリーダーを務める橘周次は、夕紀が赤ずきんの少女を刺し殺す悪夢に悩まされていた。夕紀にそのことを告げるも相手にされない周次だったが、赤ずきんの格好をして自殺した中年男性のニュースを知り、彼の遺書から「赤ずきんの呪い」の話を知るのだった。

 

 わかっていることを何度も繰り返すやたらくどい文章で、ページ稼ぎしているのが丸わかりである。おかげで非常に読みやすいが、はっきり言って書きなぐりに近い。水増し文章ばかりで話が進まない前半(上記のあらましが明らかになるのは200ページも過ぎてからである)、終始キレ散らかしていて印象の悪い主人公、「心霊現象とは想像をバーチャルに置き換えることである云々」などともっともらしく説明しておきながら最終的にはなんでもアリになってしまうオカルト展開も含め、お世辞にも完成度は高いとは言えない。

 ただ、エピローグの“凝りに凝った意地の悪さ”は流石としか言いようがなく、この救いのないラストのおかげで評価を改めたほどである。ていうか最後まで童話の赤ずきんはあんまり関係なかったですね。てっきり最後は狼のように腹を破られて…みたいになるのかと。

★★★(3.0)

 

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