角川ホラー文庫全部読む

全部読めるといいですね。おすすめ作品等はリストから

学校の怪談レベルを超えた惨劇! 憎悪の炎が生徒を、家を、村を焼き尽くす-『コックリさん』

『コックリさん』

イ・ジョンホ/2005年/319ページ

「コックリさん、コックリさん、おいでください…」夜の教室に響く静かな声。いじめに耐えかねた少女ユジンが霊に願ったのは、首謀者のこらしめ。しかし、その呼びかけに応えて現れたのは血も凍るほどの怨念をまとった霊だった―!たった一度の禁断の遊びが引き起こす、永遠に続く恐怖を描くアン・ビョンギ監督映画の原作。

(「BOOK」データベースより)

 

 韓国映画の原作小説。日本から伝わったコックリさんは韓国では「ブンシンサバ」と呼ばれており、独自の進化を遂げているらしい。本作は学園ホラーと言うよりは、とある母子の怨恨が村ひとつを滅ぼし尽くすという古き良きモダンホラーのような展開を見せる。

 いじめられっ子の少女・ユジンがコックリさんを行い、4人の生徒たちを呪った。呪われた生徒たちは頭を黒いビニールで覆われ、ガソリンをかけられて焼死するという異様な死体で発見される。その死に様は、30年前に村人たちに疎まれた末に事故で死亡したキム・インスクという少女の最期とそっくりだった。新任教師のイ・ウンジュとユジンの担任であるジェフンは、ユジンがコックリさんを行った机がかつてキム・インスクが座っていた席であることを知る。30年前の怨霊が、コックリさんによって再びこの世に呼び寄せられたのだろうか…?

 実際のところ、すべての元凶は30年前に起きた事件にあった。生徒たちとその家族、ジェフンとウンジュ、その他の教師たち、村の人々…事件を知る者も知らない者も、何もかもが燃え盛る怨みの炎に包まれていく終盤の展開は凄惨、かつやるせない。ラストに響く「こんな世の中、二度と生まれてきたくない」という絶叫にもぞくりとさせられる。輪廻を否定するまでの深い絶望と憎しみに対し、生き残った者はただ安らかにあれと祈ることしかできない。あらゆるホラー作品にも通じるような哀切な〆方が印象深い。

★★★☆(3.5)

 

◆Amazonで『コックリさん』を見る(リンク)◆

www.amazon.co.jp