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不穏な理由でお蔵入りになった番組を追うフェイクドキュメンタリー。テレビ版の補完としても秀逸-『放送禁止』

『放送禁止』

長江俊和/2016年/200ページ

事実を積み重ねることが、必ずしも真実に結びつくとは限らない。何らかの理由で放送を見送られ、テープ倉庫の片隅に眠り続ける“お蔵入り”テープ。そこには、永遠に伝えることのできない、もう一つの“真実”が隠されている―。

(「BOOK」データベースより)

 

 様々な理由からお蔵入り、放送されなかった番組を掘り起こす…というテイのフェイクドキュメンタリーを、企画・脚本を手掛けた長江氏自らがノベライズ化。テレビ版ではそれぞれの物語の真実は視聴者の想像に委ねるという形で、いわゆる「考察が捗る」タイプの番組だったのだが、小説版では各話の最後に真相につながるヒントが提示されている。
 第1話「呪われた大家族」。大家族モノのドキュメンタリーを撮影するドラマクルー。事故で休職中だが明るい父親を中心に、ほのぼのとした一家の映像になるはずだったが、ある日「一家そろってのラジオ体操に遅れた」という理由で父親がいきなり長女を殴りつける。子供たちはたびたび流血するほどの怪我を負うし、三男は去年事故死しているし、たびたび呪われた鳥居の写真がポストに入っているし、この家は何かに呪われているんじゃないか? オカルト嫌いの父親を除く一家は、霊能者を呼んでお祓いを受けるのだが…。
 第2話「ストーカー地獄編」。ジャーナリストの筒井令子氏と共に、ストーカー被害に会っている女性に密着するドキュメンタリー。マンション周囲に隠しカメラを仕込むなどして被害女性・希美さんに近づく怪しい男を発見。希美さんによれば、ストーカーの正体は「かつて付き合っていたAさん」だという。彼に直接会って説得するしかないと判断した筒井氏とスタッフはAの住所を調べるが、「Aは3年前に自殺している」という衝撃の事実が発覚。ではストーカーの正体は誰なのか?
 第3話「しじんの村」。社会からはじき出された人々が身を寄せ合い、自然の中で暮らすコミュニティを取材したルポルタージュ番組。コミュニティの代表、「しじん」こと久根氏によるポエムがあちこちに貼られた小さな村での生活は一見幸せそうに見えたが、時おり自ら命を絶ってしまう人もおり、久根氏にとってはそれが最もつらいのだという。そして取材中にも、今まさに自殺を試みた女性が…。

 各話末尾の覚書を読めば真相を推理するのはかなり易しく(勘のいい人なら読むまでもない)、テレビ版の補完としても秀逸なノベライズだろう。2話の「新幹線に殺された」は最初よくわからなかったが、新幹線の名前を考えればなるほどなと。3話の意味深なポエムも複雑な意味は無く、わりとストレートな内容だったりする。ストレート過ぎてかえって気づかないかもしれない。

★★★☆(3.5)