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ミステリ要素の強いホラー短編集。著者お得意の実話怪談ネタも-『怪談熱』

『怪談熱』

福澤徹三/2010年/272ページ

ある作家が怪談会で耳にした奇妙な話の数々。聞いてはいけない話を聞いてしまった末に……背筋も凍る表題作のほか、過去を隠してセレブの座におさまった女が、昔の同僚との再会を機に想像を絶する恐怖に見舞われる「再会」、平凡な家族が海外旅行でむかった先は、美しい南の島だった。そこには思いもよらぬ陥穽が待っていた。不条理な恐怖に身の毛がよだつ「猿島」など、ホラー小説の鬼才が放つ最恐短篇集。

(「BOOK」データベースより)

 

 「怪談熱」「ブラックアウト」「憑霊」は著者お得意の実話怪談にまつわる短編で、見覚えのあるエピソードもちらほら。その他の6編はミステリ要素の強いホラー短編。会社の伝統だという奇妙な“花見”に出席する羽目になった新入社員を襲う恐怖「花冷えの儀式」、廃屋に暮らす少年と姿を見せぬ彼の父親の思い出を語る「ドラキュラの家」、田舎で道に迷った男が警官に因縁を付けられたあげく破滅へと突き進む「夏の蟲」、出所したという昔の男の影におびえる主婦が知る悪夢に真相「再会」、猿が神の使いとしてあがめられる島でうっかり猿を殺してしまった一家の顛末「猿島」、傲慢極まりない男に妻が遂げる復讐「最後の礼拝」。1冊として見れば少々まとまりに欠けているが、個々の短編自体は楽しく読める。

★★★☆(3.5)

 

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