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全部読めるといいですね。

読み手をも惑わす混沌の迷宮。逃げ場など最初から無かった-『牛家』

『牛家』

岩城裕明/2014年/197ページ

ゴミ屋敷にはなんでもあるんだよ。ゴミ屋敷なめんな―特殊清掃員の俺は、ある一軒家の清掃をすることに、期間は2日。しかし、ゴミで溢れる屋内では、いてはならないモノが出現したり、掃除したはずが一晩で元に戻っていたり。しかも家では、病んだ妻が、赤子のビニール人形を食卓に並べる。これは夢か現実か―表題作ほか、狂おしいほど純粋な親子愛を切なく描く「瓶人」を収録した、衝撃の日本ホラー小説大賞佳作!

(「BOOK」データベースより)

 

 ゴミ屋敷をミノタウロスの迷宮になぞらえて描く「牛家」。日常風景がいつの間にか異界へ…という作品の場合、異界に迷い込むトリガーのような出来事が描かれるものだが、本作ではそれが判然としない。ゴミ屋敷に入った時点で手遅れだったのか。いや、それとももっと前から詰んでいたのか…? 劇中のカオス描写が少々くどい気もするが、このやり過ぎ感のおかげで印象深い作品になっているのも確か。

 「瓶人」は言ってしまえばゾンビ・テーマの亜流なのだが、死から蘇った瓶人は人を食ったりはせず、普通の人間と変わらない生活を送ることができる。ただ‟命令”を実行するために存在する瓶人と、エゴのために彼らを作り出す人間。その関係性は瓶人の存在自体と同じく、美しくもありグロテスクでもある。収録された2編、いずれも鮮烈。

★★★★(4.0)