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全部読めるといいですね。

濃密な心理描写が怪異以上に怖い。怪奇に取り込まれた人々の放つ妖しい輝き-『るんびにの子供』

『るんびにの子供』

宇佐美まこと/2020年/256ページ

近づくのを禁止された池で、4人の園児たちは水から上がってくる少女を茫然と見つめていた。後にその女の子を園でも見かけるようになり…(「るんびにの子供」)。ヒモ生活を追い出され悪事の果て古家に辿り着いた男は老夫婦の孫だと騙り同居し始めるが―(「柘榴の家」)。犬の散歩中に見かけた右手の手袋が日に日に自宅に近づいてきていることに気づいた姉は―(「手袋」)。第1回『幽』怪談文学賞短編部門大賞受賞作を含む珠玉の怪談集。

(「BOOK」データベースより)

 

 素晴らしい。収録されている7編はいずれも怪奇・神秘を扱っているが、印象に残るのは登場人物らの濃密な心理描写のほう。怪奇現象自体はいわば添え物に過ぎないのだが、「人間がいちばんコワいよね~」というありきたりな感じは一切ない。怪奇に取り込まれ、戻れなくなってしまった人々の放つ妖しくほの暗い輝きが読み手の心を打つ。巻頭の表題作「るんびにの子供」がその典型で、作者の作風のすべてが詰まっているため、この最初の1作目が気に入ったのならスイスイ読んでいけるはずだ。個人的には、殺人事件にまつわる怪談と見せかけて、主人公の心の闇と傷をグリグリと暴き出す「手袋」がベスト。主人公が「品の無い妹が、品の無いガキをつれてたびたび実家に帰ってくる」様に抱く執拗な嫌悪感ときたら! 共感を抱かせる描写力とリアリティのおかげでウンザリしてしまう。「キリコ」は力作には間違いないのだが、序盤でトリックが推察できてしまった。もっと素直に読んだ方がよかったかも。

 家族への愛、家族への憎悪、家族への憧憬。本作品集はどの作品も「家族」の影が濃厚だ。他人なのに他人ではない、家族という奇妙な集団の歪み。その歪みから匂い立つモノ(解説・談)が、不思議と強く人を惹く。

★★★★☆(4.5)