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どこにでもある平凡な町が、闖入者に牙を剥く。ビジュアルがエグいB級ホラー-『町』

『町』

栗本薫/1997年/285ページ

新見貴広は、恋人の三島知佳子をドライヴに連れ出した。彼が目指したのは、誰も知らないような小さな町…貴広はそこで知佳子を殺してしまうつもりだった。だがたどり着いた町は、何かがおかしかった。—ここはどこだ。いまはいつなのだ?町が、俺を見つめている?!そして貴広は、生を持たぬ者たちに囲繞されてゆく—。この世の果ての町に迷い込んだ男の恐怖。待望の書き下ろし長編。

(「BOOK」データベースより)

 

 チンピラ同然の遊び人・新見貴広は、献身的ながらも独占欲の強い恋人・三島知佳子にうんざりしていた。知佳子から妊娠を告げられ、結婚を迫られた高広は、知佳子を人気のない場所に連れ出して殺してしまおうと計画する。

 あてどもなく車を飛ばし、見知らぬ田舎町にたどり着いた貴広と知佳子。亀のような平べったい顔の老婆が営む食堂でまずいラーメンを食べ、さびれたラブホテルで一泊する。知佳子は風呂場に向かったまま、なぜかいっこうに帰ってこない。様子を見にいった貴広が見たものは、煮えたぎるバスタブの中で溺れ死に、体中の皮膚がずる剥けになったまま茹っている知佳子の無惨な姿だった…。

 

 スラッシャー映画なら速攻で死ぬタイプのアホカップルがおかしな町へ迷い込む、冒頭の雰囲気は非常に良い。テレビに不気味な顔が映ったり、食べていた白米がウジ虫に変わったりと、怪奇現象自体はまあよくあるタイプのものだがエグさはなかなかのもの。

 浴槽で死んでいたはずの女が姿を消し、男が逃げるように町をさまよう展開になってからはやや回りくどい文書が多くなり、トーンダウンしてしまうのが残念。町の「正体」も終盤で判明するが、男が受けてきた仕打ちとイマイチ結びつかないのも気になる。町の住民がやたら爬虫類っぽい顔立ちだったり、ラジオから「ふにぐん、ふたぐん」だの謎の声が流れてきたりするのでホラーではおなじみのアレが出てくるのかと思いきやそうではありませんでした。エピローグに出てくる「異形」もインパクトはあるのだが、結局どういうことなのかよくわからない。ビジュアル面のインパクトを重視した、あえてのB級ホラー展開ということなのだろうか。

★★★(3.0)

 

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