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不幸で不幸で不幸にまみれた不幸すぎるヒロインを救うのは、まだ見ぬ我が子と亡き母の呪術…-『ベイビー・セメタリー』

『ベイビー・セメタリー』

和田はつ子/2005年/220ページ

二人の子を持つシングル・マザーの水谷あすかは、中学の同窓生・金原雅人と再会し、彼の子供を身ごもった。だが、大富豪のひとり息子である雅人との結婚は金原家に反対され、子供を堕ろせば、五百万の慰謝料を払うといわれる。それでも子供を産もうとするあすかだったが、身近な人が次次と奇妙な死を遂げるようになり―。彼らの命を奪うものは何なのか。あすかが宿す赤ん坊の運命は―。戦慄のサイコ・サスペンス。

(「BOOK」データベースより)

 

 イギリス人の夫と別れ、双子の姉妹とともに実家へ出戻りした水谷あすか。彼女はとにかく不幸の星の下に生まれついており、本書の220ページ中170ページは彼女に降りかかる受難が延々と描かれる。恋人の金原雅人は世間知らずのボンボンで、その母親の順子は明らかにあすかを敵視している。あすかの母親はこれまた厭味な継母で、父親は捨てた実母に冷たく、姉のさやかも玉の輿に乗ったあすかに嫉妬し、あることないことを金原家に吹き込んで自分が雅人と付き合いはじめる始末。雅人の子を妊娠していたあすかは堕ろせば500万払うと金原家に言われ、周囲皆から堕胎を勧められる。頼れる相談相手だった実母は難病で亡くなり、実母が残したエステサロンも、実母の再婚相手(これがまた絵に描いたようなロクデナシ)に狙われている状況。親友だと思っていた玲奈は実は金原家の顧問弁護士・日野に惚れており、日野の差し金で暗躍するものの実は日野自身はあすかに恋心を抱いているという状況。しかも別れたイギリス人の元夫もよりを戻しに日本へ向かっているという…。よくもまあ、ここまでドロドロの人間模様を描けるものである。ドロドロが煮詰まり過ぎて香ばしさすら漂ってきている。

 ラストはまあ意地悪な人が全員死んでスカっとするお話ですが、超常現象の原因よりも人間関係のグチャグチャさのほうが怖い。「霊よりも人間のほうが怖い!」なんて決まり文句は最低限、本書くらいエグい地獄絵図を見てから言ってほしいものだ。

★★★☆(3.5)

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