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「6人いる」! 仲間内に紛れ込んだ“やまのめ”が欲望と恐怖を加速させる-『やまのめの六人』

『やまのめの六人』

原浩/2023年/336ページ

嵐の夜、「ある仕事」を終えた男たちを乗せて一台の乗用車が疾走していた。峠に差し掛かった時、土砂崩れに巻き込まれて車は横転。仲間の一人は命を落とし、なんとか生還した五人は、雨をしのごうと付近の屋敷に逃げ込む。しかしそこは不気味な老婆が支配する恐ろしい館だった。拘束された五人は館からの脱出を試みるが、いつのまにか仲間の中に「化け物」が紛れ込んでいるとわかり……。
怪異の正体を見抜き、恐怖の館から脱出せよ!横溝正史ミステリ&ホラー大賞受賞作家が放つ、新たなる恐怖と謎。

(Amazon解説文より)

 

 ダイヤモンドを強盗した5人の男たちが、逃走中に崖崩れに巻き込まれる。仲間の1人・白石は巻き込まれて死亡。残る灰原、紫垣、紺野、緋村、山吹は山奥の民家に助けを求めるが、実はこの家の住民は迷い込んだ観光客を始末して金品を奪う殺人一家だった。灰原が犠牲になり、残るメンバーは逃走を図るも、ダイヤはいつの間にか果物にすり替えられていた。疑心暗鬼に陥る紫垣、紺野、緋村、山吹だが、自分たちが重大な見落としをしていたことに気づく。俺たちはいつの間に6人になっていたのか…?

 

 解説では『サイコ』が引き合いに出されているが、『レザボア・ドッグス』だの『悪魔のいけにえ』だの、いろいろな映画を彷彿とさせる設定。仲間がいつの間にか1人増えていた、というのもわりとお馴染みのネタである。この王道中の王道シチュエーションに、やまのめ≒おんめんさまという土着ホラーのエッセンスが加わっており、なかなか良いアクセントになっている。やまのめと関わりの深いザバラ(邪払)の使い方も印象的。

 あまりに擦られ過ぎたネタではあり、正直なところ結末も含めて「斬新さ」は感じられない。キャラクターの立たせ方、新たな情報の出し方は非常にうまく、いくらでもえげつない方面に尖らせることができる題材をあえて王道から外れないように調理したという印象。程よいハラハラ感を提供してくれる、万人向けかつパルプな1冊。

★★★☆(3.5)

 

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