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アイデア自体は悪くないのだが、もっと面白くなりそうな「もったいなさ」が…-『世にも奇妙な物語 小説の特別編 悲鳴』

『世にも奇妙な物語 小説の特別編 悲鳴』

旺季志ずか、中村樹基、落合正幸/2002年/282ページ

素敵な恋に憧れる理沙が迷い込んだドラマのような世界とは…!?「ドラマティックシンドローム」。犯罪被害者の遺族が加害者に仇討ちをするTV番組、仇討ちショー。蘭は撲殺された父の敵を討つべく番組に出演する!「仇討ちショー」。昏睡状態で話せないはずの祖母の声を聞いてしまった美保。彼女が祖母に頼まれた願いとは…。「おばあちゃん」。一八九名が帰らぬ人になった飛行機事故。ただ独り奇跡的に生き残った凛を悪夢が襲う!「奇跡の女」。奇妙な世界に迷い込み、恐怖のあまり絶叫した、四人の美女たちの物語。

(「BOOK」データベースより)

 

 「’01 秋の特別編」のノベライズ。女性の絶叫を封じるという「悲鳴壺」なる安易な骨董品をタモリが手にしたところから、4つの奇妙な物語が幕を開ける――。

 

 「ドラマティックシンドローム」(ノベライズ:蒔田陽平)-恋愛ドラマに激ハマリ中の理紗は、平凡な恋人にうんざりし始めていた。もっとドラマティックな恋がしたいと夢想する理紗の前に現れたイケメン・伊集院誠。彼の浮世離れした振る舞いと言動に「これこそ自分が求めていた恋!」と浮かれる理紗。まるでラブロマンスのよう。しかし伊集院は白血病で余命僅からしい。まるでヒューマンドラマのよう。かと思いきや人を刺し殺した!? まるでサスペンスのよう! 理紗を連れて逃げる伊集院、追いすがるパトカー、カーアクション。追い詰められた伊集院は狂気の笑みを浮かべて理紗に迫る。まるでサイコスリラーのよう…。ドラマ好きの主人公が、まるでドラマのようなシチュエーションに次々と巻き込まれる…というコメディだが、これはやはり映像で見るべきネタであろう。

 「仇討ちショー」-仇討ちが合法になったこの時代では、「カタキ」をゾーンに放ち、「仇討ちさん」が復讐を遂げる様を中継する番組「仇討ちショー」が人気を博していた。父親を暴漢に殺害された蘭は仇討ちショーに出演、ボウガンを武器として選び、カタキの鬼塚を追い詰めていく。番組中は再現ドラマや取材VTRが流れ、実況と解説も蘭を応援。鬼塚の服に記された的を撃ち抜けば自動車やお米、ティッシュ1年分といった賞品ももらえるのだ。番組は大いに盛り上がるが、鬼塚はゾーンを脱出して町へと逃げ出してしまい、舞(とテレビスタッフ)は群衆の目前で鬼塚を追い詰める。カタキを前にボウガンを構えた舞だが、「撃て、撃て、撃て、撃て」との群衆の大歓声を浴びるうち、心に迷いが生じていた…。デスゲームが娯楽になる未来という特に新鮮味のない題材だが、仇討ちショーの悪趣味さ、スカムさはまあまあ楽しい。

 「おばあちゃん」(ノベライズ:加賀あきら)-寝たきりのおばあちゃんをお見舞いに行った少女・美保は、おばあちゃんの声を頭の中で聞く。自分の命はあと数日しか残されていないが、最後に一目だけ弟に会いたい。そのために美保の身体を貸してほしい…。優しい美保はおばあちゃんと身体を交換するが、その途端、病に侵された体が美保にすさまじい苦しみを与える。「おばあちゃん、早く帰ってきて!」美保の悲痛な叫びを聞きつつ、「おばあちゃん」は目的を果たすため必死に急ぐのだが…。不穏さを端々で漂わせつつ、ラストで一気に恐怖の展開へ突き落とす、ホラーとして理想的な一本。後味の悪さが大変よろしい。

 「奇跡の女」-189名が犠牲になったジャンボジェットの墜落事故で、唯一生き残った‟奇跡の人”こと久保田凛。女優志望だった凛は「マスコミの前で目いっぱい悲劇のヒロインを演じれば話題性抜群、女優として成功できる!」と密かにほくそ笑む。だが入院中の凛の周囲で、しだいに奇妙な出来事が起きるようになる。死の運命を逃れた彼女を再び捉えるため、死神が姿を現したのだろうか…? 先の「おばあちゃん」とは正反対に、典型的なホラーと見せかけて実は…という展開だが、最後にこれをやられると生ぬるく感じてしまう。あとノベライズとしては文章がちょっと…。

 

 正直なところ「このアイデアならもっと面白く調理できたのでは?」という話が多く、ノベライズとしても物足りない。ともさかりえ主演の「ママ新発売!」が省かれているのはなぜだろうか。

★★☆(2.5)

 

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