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精神潜入捜査で猟奇殺人犯を追え! 実写系アドベンチャーゲームのノベライズ-『es エス』

『es エス』

高島健一(原作)、鈴木俊介(著)/2001年/286ページ

それは、20年前に起きた大量虐殺事件のリバイバルなのか?進行中の連続猟奇殺人事件を調査する刑事・日下部清竹は、犯人と目される人物に襲われ、意識不明の状態に陥る。人の意識にアクセスし、その記憶を探ることができるという特殊な能力をもつ少年・荏原サトルは、清竹の意識内に潜入し、事件解明の手がかりを得ようとするが―。サトルを待っていたのは、事件の真相と果てしなく広がる人の心の“闇”だった。全編実写で構成された話題のサイコサスペンス・アドベンチャー・ゲームの小説バージョン、登場。

(「BOOK」データベースより)

 

 他人の精神に潜り込む能力を持つ高校生・荏原サトル。彼は昏睡状態にある刑事・日下部清竹の精神へ潜入し、行方不明の少女・橘由美に関する情報を探るよう依頼される。日下部は世間を騒がせている「荒川連続猟奇殺人」の捜査中に何者かに襲われ、頭部に重傷を負っていた。犯人はまだ生きている犠牲者の身体に傷を刻み、遺体の周囲に食べ物を置くという不可解かつ猟奇的な人物。すでに5人が犠牲となり、橘由美も同一犯に誘拐されたと見られていた。
 日下部の精神に入り込み、捜査を追体験していくサトル。どこか頼りないが憎めない向井敬一刑事、日下部を慕う婦警・加藤奈津美、ラーメン屋の出前持ち・ゲンさんといった、周囲の人間との会話の記憶の奥底に、事件へと連なる情報が眠っていた。それは20年前、飲食店「ひばり亭」で起きた殺人事件の被害者と、今回の連続殺人被害者たちとの奇妙な共通点だった。日下部は「ひばり亭」事件の生存者のひとり、野上亜希子とすでに接触していた。事件の犯人とされる塩崎和郎は行方不明で、生き残ったのは塩崎の次男と亜希子だけだという。心理学を専攻する亜希子は、意図は不明だが「塩崎の次男と会わせてください」と日下部に依頼していたらしい。
 仲のいい同級生、ユーナの兄が日下部の記憶に登場していた向井刑事であることを知ったサトルは、彼と協力して事件の断片をつなぎ合わせていく。向井によれば、亜希子の恩師である心理学教授・石森が何者かに殺害されたという。一連の事件はすべてどこかで繋がっているのか。そして最後に明かされる、驚愕の真実とは…。

 

 グラフィックがすべて実写映像であることを売りにした推理アドベンチャーゲーム、『es エス』のノベライズ作品。プレイヤーは精神潜行能力を持つ主人公となり、ドラマを観るかのように事件を体感できる。日下部役に三上博史、亜希子役に釈由美子、向井役に三村マサカズと、キャスティングもなかなか豪華。ノベライズ版の主人公・サトルと彼のクラスメイトたちは、ゲームには登場しないオリジナルキャラである。
 サトルの捜査手法があまりにゲーム的過ぎたり、真犯人の正体がバレバレだったり、動機も典型的なサイコパスしぐさで新鮮味に欠けたりと、難点がないわけではない。ただ物語はテンポよく進むし、実写では映せないようなグロテスクな描写もあり、小説ならではの強みは活かされている。大筋はゲーム版とほぼ同じだが、クライマックスの“決着”は大きく変更され、さらに衝撃的なエピローグも追加されている。ゲーム経験者でもじゅうぶんに楽しめる内容だろう。もっとも、ドリームキャストというマイナーハードで発売されたことに加え、検索性の低いタイトル(角川ホラー文庫内でも鈴木光司『エス』と被ってしまっている)のおかげか、ゲーム自体の知名度はさほど高くないようだ。

★★★(3.0)

 

著者 :
セガ
発売日 :

www.amazon.co.jp