『僕が殺しました×7』
二宮敦人/2012年/352ページ
僕は恋人のリエを殺した。いや、殺したはずだったー。だが僕が警官に連行された先は、封鎖された会議室らしき場所。しかもそこには5人の男女が集められ、警官を含めた全員が驚愕の告白を始めていく。「私がリエを殺しました」とー!謎の主催者の指令のもと幕をあけた、真犯人特定のためのミーティング。交錯する記憶、入り乱れる虚実、明らかになっていく本当のリエ。リエを殺したのは誰なのか!?予測不能の新感覚ホラー、開演。
(「BOOK」データベースより)
“僕”こと大学生の藤宮リョウは、恋人の榊リエに「リョウと別れて、他の男と結婚する」と告げられ激昂、ナイフでリエを刺し殺してしまう。空しさと後悔の念に苛まれる彼のもとへ、警官の川西シンスケが現れ、複数の男女が待つ会議室へとリョウを連れていく。
リエが殺害されたことを一堂に告げた川西は、「リエを殺したのは自分だ」と驚くべき告白をする。一方的な恋愛感情によるストーカー行為の果てにリエを絞殺した川西は、あの世で彼女と一緒になるつもりなのだという。混乱するリョウだったが、会議室にいる全員が「自分がリエを殺した」と思い込んでいることを知り、愕然とする。
リエの昔からの親友だという坂倉ケーコは、友情を枷に支配され続けることに我慢ならず、溺死させたと語る。小学生の吉田ミツルは、「自分を殺してほしい」というリエの願いを叶えるため、毒殺したという。義母の榊ヨリコは、新たな恋路の邪魔になるリエを車で撥殺した。ひそかにリョウを愛していた佐久間カナミは、衝動的に駅のホームからリエを突き落とした。AVスカウトマンの桜井ワギは、結婚を迫るリエに愛想が尽き、バットで撲殺したと告白する。
それぞれの告白のたびに明らかになる、リョウが知らなかったリエの真実の姿。果たして本当の真犯人は誰なのか。この場に彼らを集めた人物の目的とは。謎が深まる中、リエの弟・榊カズヤは、姉のみならず、その恋人や友人、義母までもが姿を消していることを知る。会議の参加者の名前と「みんなリエのこと嫌い」と書かれた紙を姉の部屋で発見したカズヤは、手がかりを求めて行動を開始した…。
ひとりの人物が7人の犯人によって7回殺害される、という奇妙な事件を描いたホラーミステリ。犯人たちの独白から浮かび上がってくる「リエの真実の姿」には、妙なリアリティがある。決して悪人ではないのに、なぜか周囲にトラブルを撒き散らしてしまう――そんな厄介な人物像が容易に想像できてしまうのだ。本作では、変態警官の川西、義母のヨリコ、AVスカウトマンのワギといった年長者たちが戯画的なまでに醜悪に描かれる一方で、ケーコやカナミ、そして主人公リョウのリエに対する複雑な感情の描写はなかなか巧みで読み応えがある。作者の本領はこの辺りにあるのだろう。
ラストには「そうとでもしないと締められないだろうな」と思わせる強引さもあるが、作中でところどころ感じられた不自然さをまとめて回収するオチになっており、その点でも手際の良さが光る。
★★★(3.0)

