『ゾク こわい本8 人の闇/猫目小僧1』
楳図かずお/2025年/348ページ
楳図かずおの恐怖と妄想の世界へようこそ。
異色のダークヒーロー、猫目小僧登場!300年に一度しか生まれない猫又の子として誕生した「猫目小僧」。だが、人間に似た姿で生まれたことから、妖怪からも人間からも忌み嫌われる。孤独な旅を続ける猫目小僧は、さまざまな奇怪な事件に巻き込まれながら、立ち向かっていく――。何不自由なく育っている少年・武夫は、ある日、顔が焼けただれた男から、「父親に渡してほしい」と細長い包みを渡される。だが、その中身はなんと切り取られた右腕だった――。屋根裏から眺めていた猫目小僧は、武夫のために動くが……。(「不死身の男」)ほか2篇。
(Amazon解説文より)
妖怪からも人間からも忌み嫌われる悲運の少年、猫目小僧を主人公にした一連のシリーズ。どうしたって『ゲゲゲの鬼太郎』を連想してしまう設定だが、猫目小僧は傍観者に徹していることも多く、鬼太郎のように積極的に人助けや妖怪退治を行うわけではない。そもそも猫目小僧は、首をちょん切られても普通に行動できるくらいの生命力はあるが、それ以外の超能力や特殊な武器やを持っているわけではない。傍観者になりがちなのは、そもそも妖怪や怪人と真正面から戦うほど強くないからでもある。
「不死身の男」-裕福な家庭で暮らす武夫少年の前に、焼けただれた顔をした気味の悪い男がしばしば現れるようになる。男は「これをあなたの父親に渡してください」と、布に包まれた物体を武夫に渡す。包みの中身を見た父親は「あいつが帰ってきたんだ!」と怯えだす…。その後、武夫は焼けただれた顔の男に誘拐されるが、線路上でもみ合っているうちに男は電車に轢かれてしまう。男は死に際に「あなたが私の顔をこんなにした」「あなたはあのお屋敷の子供ではない」という不穏な言葉を残していた…。
異常な再生力を持つ怪人に執着される一家の話。記念すべきシリーズ第1作だが、この回の猫目はホントに話に絡んでこない。作者によれば「人間生活の裏側を覗き見る」というのが本シリーズのテーマらしい。
「みにくい悪魔」-醜い外見に生まれたその男は、周囲の人から蔑まれるうちに心の内面まで醜悪になり果てていた。ただひとり、彼を愛していた父親は息子を助けたいがために、マッドサイエンティスト・妖怪博士の実験にその身をゆだねてしまう。さらに美男子の死体を手に入れた妖怪博士は、その男性と醜い男との脳移植手術を決行する。博士に捕らえられていた猫目小僧は檻を脱出し、“みにくい悪魔”の後を追うのだった…。
心の醜悪さはいずれ外見にも表れるという、楳図漫画ではおなじみのパターン。「もとから醜いものは心まで醜くなるしかない」という残酷すぎるテーマを「当時のコンプラが~」みたいな感じで流してしまうのは浅薄だろう。それはそれとして妖怪博士のメガネが凄い。どこで売ってるんだ。
「妖怪肉玉」-桜木家の人間の前にだけ現れるという妖怪・肉玉。悪臭を漂わせるただれた肉の塊というその恐ろしい姿を見た者は、やせ衰えて必ず死に至るのだという。桜木家の屋根裏に住むことにした猫目小僧は、肉玉におびえる一家をからかってやろうとするが、なぜか猫目小僧の前にも肉玉がその姿を現す。肉玉を恐れるあまり、桜木家の人々は自らの目を潰してしまうが、それでも肉玉の呪いから逃れることはできなかった。恐怖心を糧に成長した肉玉は、ついに実体化し街中の人々を襲い始めた…!
呪われた一家の前にのみ姿を現す怪異、という令和ホラーでも通用しそうな肉玉の設定が秀逸。ただでさえおぞましい姿なのに、犠牲者の口の中に潜り込むという殺害方法もグロテスク極まりない。そんな化け物が際限なく、どんどん周囲に広がっていくという終盤の展開も絶望感があって良い。本書の中ではいちばんの出来。
巻末企画の「UMEZZ写真館」では、テレビや舞台、イベント等で張り切る楳図先生の写真が多数。良い。
★★★☆(3.5)

