『バチカン奇跡調査官 月を吞む氷狼』
藤木稟/2014年/384ページ
春祭で賑わうノルウェーの田舎町で、獣の唸り声が聞こえたかと思うと、忽然として満月が赤く呑まれ、暗闇の広場に轟音が響き渡った。人々が「ラグナロク」という言葉を囁くなか、すぐ側の屋敷では凍死体が発見される。温かな外気温にもかかわらず、わずか数十分で氷漬けにされた書斎は、北欧神話に伝わる氷狼の仕業なのか。平賀とロベルトは調査を進めるが、事件の裏にはあの男がー!?天才神父コンビの事件簿、第8弾。
(「BOOK」データベースより)
平賀とロベルトの友人であるFBI捜査官・ビルは、デンバーでの事件以降、すっかり閑職に追いやられてしまった。冴えない部下・ミシェルとともにノルウェーの田舎町を訪れたビルは、獣の唸り声と共に満月が赤く夜空を染め、月が消えるとともに轟音が鳴り響くという奇妙な光景に遭遇。さらに、近くの屋敷では室内で氷漬けになった死体が発見される。人々は月を呑む伝説の氷狼・ハティのしわざだと囁きあう…。その後、仕事のためサンティ・ナントラボ社を訪れたビルは、宿敵たる秘密結社ガルドウネのジュリア司祭の姿を見る。先日の奇妙な氷漬け事件も、司祭のしわざなのでは…? ビルはジュリア司祭を知る平賀とロベルトに連絡、彼らに協力を依頼することにした。
調査により、ノルウェーでは同様の奇妙な事件が何件も起きてることが判明する。ロベルトはバチカン情報部のシン博士にも協力を仰ぐが、姿を消した前任者・ローレンに異様な執着心を持つシン博士は、一連の事件はローレンのしわざに違いないと語る。一方、氷漬け事件が起きた屋敷の庭を調べる平賀は、高熱で溶けたアルミニウムを発見。 さらに、庭には大型犬のような足跡も残されていた。氷狼ハティに加え、その双子の兄弟である炎狼スコルがここに来ていたとでもいうのだろうか。北欧神話のラグナロクが再現されるという、「奇跡」の真相とは…。
いつもの奇跡調査とはやや方向性が異なり、ノルウェーで起きた怪死事件に平賀とロベルトの神父コンビ&ビルとミシェルのFBIコンビが挑むという内容。デンバー事件の顛末を描いた『バチカン奇跡調査官 ラプラスの悪魔』に加え、平賀とローレンの関係や、ジュリア司祭の出自が明かされる短篇集『バチカン奇跡調査官 天使と悪魔のゲーム』を読んだあとのほうが楽しめるだろう。ビル捜査官がただならぬ立場に追いやられたことがわかる序章からスリリングな展開で、氷と炎が巻き起こる殺人現場、怪しげな新薬を開発中の医療企業、いまだ行方が知れないローレンとシン博士の因縁、土着信仰の巫女である老女とロベルトとの邂逅と、いつも以上に物語はスピーディに展開する。最後には、北欧神話とキリスト信仰の「意外な結びつき」が明らかになるビックリ要素も待ち受けている。正直、このシリーズはキリスト関連の描写が華美というか濃厚なので(題材が題材なので当たり前だが)、本書はかなり読みやすかった。これくらいの味付けがちょうどいい気もする。
★★★☆(3.5)

