『闇吹く夏 シム・フースイversion4.0』
荒俣宏/1999年/345ページ
異常気象―その年、黒く怪しい闇が夏を阻んでいた。雨が降り続け、人々は不安にかきたてられ、東京はカビに覆われようとしていた。時を同じくして、遙か南太平洋では、エルニーニョ現象が起こっていた。南米ナスカ高原の呪術師は渇ききった砂漠で雨乞いの儀式を開始した。その裏で密かに進行する首都移転計画の影には、暗黒の帝都建設の陰謀があった。異常気象の謎を解くため、風水師・黒田龍人は、東北へと飛んだ。もう、夏はこないかもしれない―風水ホラーの傑作。
(裏表紙解説文より)
風水師・黒田龍人は岩手県花巻市の農業青年団に招かれ、現地を訪れる。ヤマセによる冷夏が続き、花巻の農業は大打撃を受けていた。青年団団長の大田黒老人は、花巻に縁の深い宮沢賢治の教え子だったという。黒田は宮沢賢治の著作を引き合いに出しつつ、風水的な視点から見た花巻市の「弱点」をレクチャーする。さらに大田黒の話から、地相鑑定士・毛綱阿弥之助なる人物が土地を買い叩こうと暗躍していることが判明する。毛綱の配下による測量現場を訪れるた黒田は、かつて同じ師のもとで風水を学んだ元恋人・庄野夕子と再会。彼女たちは龍脈を枯らす風水釘・チャンスンを地中に埋め込んでいた。夕子は「日本にとって非常に重要なプロジェクトだ」と語り、その場を去る。
毛綱阿弥之助の正体は、かつて黒田たちと敵対した風水師・田網奇鐄であった。国の遷都計画において花巻市周辺が候補地に挙げられていることを知った田網は、龍脈を枯らして土地を安く買い上げ、遷都後に復活させることで巨利を得ようと企んでいたのである。黒田は田網、そして夕子と対峙する決意を固めるが、すでにパートナーの有吉ミヅチは田網の手に落ちていた…。
シリーズ第1作『ワタシnoイエ』の元凶にして小悪党・田網奇鐄が再登場。彼の愚行によって、世界規模の風水的危機が訪れる。しぶしぶながら田網に協力し、花巻市の龍脈を蘇らせる計画を練る黒田。そのカギとなるのは、宮沢賢治と、その作品を愛する人々だった…。クライマックスでは、ある方法によって蘇る「龍」のビジュアルが強烈なインパクトを放ち、終盤は大いに盛り上がる。本シリーズならではの風水師同士のバトル(口論)や、黒田の過去が垣間見える展開もよい。それにしても首都移転の話、最近はまったく聞きませんね。本当に東北に移転していたらそれはそれで大変だっただろうし…。
なお、本作を原作としたアドベンチャーゲーム『闇吹く夏 帝都物語ふたたび』がプレイステーションから発売されているが、シナリオは大幅に改変されているようだ。
★★★(3.0)

