『夜見師』
中村ふみ/2017年/288ページ
“夜見師”―祟り神を始末する者。その存在を知る者は限られている。21歳の五明輝は、正体不明の呪いのせいで余命が3年ほどしかない。妹のために少しでもお金を稼ごうと、破格の金額で舞い込んできた家政夫の依頼を受ける。雇い主を訪ねると、車椅子に乗った青年・多々良が現れた。この屋敷には封じられた多数の祟り神が眠っており、生活できる者は選ばれるとのこと。お金のため、仕事に精を出す輝だったが…。
(「BOOK」データベースより)
正体不明の呪いに蝕まれた五明家の男たちは、みな二十代前半で命を落とす――。21歳の五明輝(あきら)は、自分の余命が残りわずかであることを自覚していた。妹のために大金を稼げる仕事を探していた輝は、持ち前の霊感を活かし、霊障のある屋敷に住む謎めいた男・多々良克比古の家政夫として雇われることになる。
普段は車椅子で移動し、まともな食事も摂らない多々良。彼の生業は“封じ手”が箱に閉じ込めた怨霊を始末する“夜見師”だった。箱の中には怨霊の生前の姿、その最期、祟りをなす存在になるまでの一部始終が霊と共に封じられている。夜見師とは、この箱の中に魂を滑り込ませ、悪しき霊を現世から断ち切る役目を負う存在なのだ。多々良の付き添いとして箱の「処分」に立ち会うことになった輝は、怨霊たちのつらい境遇に心を痛め、消滅せんとする魂を彼なりに救おうとする…。
輝の行動は、箱の処分を続けるうちに人間味を失いかけていた多々良の内面にいくばくかの変化をもたらす。多々良は、自分に隠されたある秘密を輝に打ち明けた。そして無数の箱の中に、五明家に呪いをもたらした元凶が潜んでいるかもしれないことも…。
毒舌でミステリアスな主人公(イケメン)と、やや直情的で行動力あふれる青年(イケメン)のバディものという、角川ホラー文庫だけでも5、6作くらいはあるような気がする王道の設定。無数に積まれた箱ひとつひとつに、封じ込められた悪霊とその人生が丸ごと入っているというわかりやすさが良い。無数に話が作れそうなパターンだが、「五明家を呪う因縁」にスポットを当てつつ、きれいに起承転結がまとまっている。この“転”にあたる多々良の「正体」、決して突飛な設定ではないのだが、終盤に向けていい感じに緊張感をもたらしてくれている。後半、多々良が輝の指を舐めるシーンは唐突過ぎると思ったがそれはそれとして、読みやすく素直に面白い1冊。表紙に惹かれたなら手に取っていいと思う。
★★★(3.0)

