角川ホラー文庫全部読む

全部読めるといいですね。読んだ上で、おすすめしたい作品は全力で推します。

猟奇的殺人事件を金田一耕助が見事解決! 内容はともかくなぜ角川ホラー文庫に?-『トランプ台上の首』

『トランプ台上の首』

横溝正史/2000年/289ページ

散乱したトランプの上に置かれた女の生首―。隅田川沿いの古びたアパート「聚楽荘」で起きた猟奇事件の真相を探る表題作「トランプ台上の首」。白昼の隅田川にポツンと漂う一艘の貸しボート。中には、首を途中まで挽き切られ、血まみれになって横たわる男女の惨死体が…。名作「貸しボート十三号」ほか、幻の探偵エッセイ「探偵小説講座」を収録。

(「BOOK」データベースより)

 

 角川文庫で展開されている「金田一耕助シリーズ」の1冊。確かに凄惨な殺人事件は発生するが、この程度の猟奇は金田一シリーズではよくあることなので、なぜ本書のみホラー文庫で刊行されているのかは不明。
 「トランプ台上の首」―ストリッパーの女が自室のアパートで殺害された。彼女の生首はトランプテーブルの上にわざわざ鎮座されていたが、首から下の胴体は発見されなかった。被害者の身元を隠したいのならばむしろ首のほうを隠すのでは? 果たしてなぜ彼女はこのような殺され方をしたのだろうか?
 「貸しボート十三号」―貸しボートから見つかった男女の死体。女は首を絞められた後に心臓を刺され、男は心臓を刺された後に首を絞められていた。男の方は裸で、しかも2人の首は途中までノコギリで挽かれているという状態だった。この奇妙な死体はどういう状況で生まれたのか…?
 両作とも尋常ならざる死体が発見され、関係者の陳述で謎がさらに深まるも、ラストに金田一がズバっと解決して幕というお約束の展開であるが楽しく読める(ボートが事件に大きく関わっているという共通点がある)。会話文を活き活きと書くのが実にうまいことにも改めて気づかされる。巻末にはエッセイ「探偵小説講座 -横溝正史トリック評論集-」が収められており、短めながらなかなか興味深い内容。さらに突き詰めたものを読みたかった。

★★★(3.0)