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老い、復讐、アイデンティティ喪失…日常に寄り添う恐怖を奇想と共に描く-『黄昏の悪夢』

『黄昏の悪夢 自選恐怖小説集』

清水義範/1993年/271ページ

なにげない日常生活の中で知らぬまに忍び寄る黒い影。それは〈恐怖〉というものにかわり、人々の心に巣喰っていく…。人生の終着駅にみた恐怖を描く表題作のほか、七編。著者自ら、選びぬいた最高級のホラー短編集。

(「BOOK」データベースより)

 

 表題作「黄昏の悪夢」と、続く「靄の中の終章」は老いについての恐怖を描く。特に後者はボケ老人の一人称で描かれており、話が延々とループする様にいろんな意味でぞっとさせられる。怖さだけならこの2編が特上級。「時間線下り列車」は列車旅行のノスタルジーをくすぐるファンタジー。見た覚えがない情景に懐かしさを感じさせる描写力には舌を巻く。「こわい話」は怪談のうまい人は何がうまいのか、スティーヴン・キングが何故怖いのか…等を語るエッセイ風の作品。かと思いきや…。

 なにげない一幕から始まる、日常の中の恐怖を描く7編。どちらかと言うと恐怖そのものよりも奇想のほうに重きを置いている印象だが、バラエティに富み楽しく読める短編集。

★★★☆(3.5)

 

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