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日本を憎悪する外国人労働者を、八百万の神の力でバッタバッタとなぎ倒す。シリーズ随一の問題作-『さかさ』

『さかさ』

倉阪鬼一郎/2010年/335ページ

世にはびこる悪しきものを封印するため全国を歩いていた聖域修復師の八神宇鏡は、不穏な兆しを感じて江の島にやってきた。時を同じくして、都内各地のコインロッカーや鉄橋の下で頭部がさかさになった人形が発見され、その周辺では必ず凶事が起こっていた。八神は一連の事件が、この国の破滅を願う何者かによる霊的テロリズムであると察知し、八百万の神を背負って戦うことを決意する。かつての平穏な日常は取り戻せるのか?―。

(「BOOK」データベースより)

 

 各地にばら撒かれた「さかさ人形」。それは日本という国自体を激しく憎悪する南方出身の歌姫、LYSAが率いる外国人組織たちによる霊的テロ攻撃だった。それに立ち向かうのが、シリーズ2作目で突如登場し、デウスエクった活躍を魅せてくれた聖域修復師・八神宇鏡である。幾多の日本人が犠牲になる中、敵のアジトに乗り込んだ八神は己の左腕に「日本の八百万の神々のスーパーパワー」を宿し、襲い掛かる外国人たちの頭部を破壊したりしながらLYSAの元へと向かうのであった。

 ストーリーは起伏が少ないうえに陰惨。これまでのシリーズ作品が「日常にひたひたと忍び寄る悪意」を描いていたのに対し、本作では敵の正体はかなり早い段階で明らかにされ、あとは罪も無い人々が理不尽に死んでいく様が延々描写される。前作『ひだり』に引き続き「虐げられた者の逆襲」がテーマの1つではあるが、LYSAたちはいくらなんでも報復手段が残虐すぎる。「日本人であること自体が罪」と言われれば八神としても対峙せざるを得ないのである。ラスト、お互いに言葉をぶつけあうLYSAと八神の主張はどこまでも平行線を辿り、根本的な問題は何も解決していない。安易なめでたしめでたしの解決を用意しなかったのは著者の誠実さゆえだろう(まあいつものごとく大爆発して大惨事にはなるのだが)。シリーズの中では異彩を放っており、好みが分かれそうな一作。

★★★(3.0)