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平均点の高い実話怪談集だが、コンセプト的に恐怖度は薄れがちか-『全国怪談 オトリヨセ 恐怖大物産展』

『全国怪談 オトリヨセ 恐怖大物産展』

黒木あるじ/2015年/240ページ

怪談とは、その土地が持つ記憶の断片なのかもしれない―。北海道のトンネル内で友人が叫んだ言葉の意味。福井県沿岸に浮かぶ島の神社へ不埒な目的で立ち入ったカップルの末路。滋賀県の琵琶湖付近に突如出現した巨大な建造物。愛媛県の放蕩息子が道を踏み外さなかった理由。沖縄で生まれ育った祖父の法要中に起きた怪異を収束させた物。全国47都道府県で収穫した怪談実話を産地直送でお届けする、世にも奇妙な見本市!

(「BOOK」データベースより)

 

 前作『全国怪談 オトリヨセ』に続き、日本全国47都道府県のご当地怪談に、怪談の元となった史跡・事象・歴史などのミニ解説が付随するスタイル。わかりやすい方言も含めて津々浦々な雰囲気は強く、取り上げられているご当地ネタもメジャー過ぎず、マイナー過ぎずな絶妙感である。前作に散見された「ムリヤリご当地にしてるやろ」みたいなツッコミどころも少ない

 1話1話が印象的なこともあり、実話怪談系の中ではどの話もそれなりに印象に残る一方、一線を越えたクセの強い話も少なめになっている。実話怪談は時おり「なんなんだコレは」という不条理で理不尽なモノが混じっており、いいアクセントになるのだが、本シリーズの場合は「なるほど、これは古くからの言い伝えにある○○が原因なんだな」と正体が察せられてしまい、恐怖度が薄れてしまうのかもしれない。ご当地ネタを扱う以上、あまりにも不快で悪趣味な話は扱いにくいだろうし…。「まんが日本むかし話」のような、めでたしめでたし系のオチになってしまっている話も少なくない。

 むろん、しっかり怖い話もいくつかはある。某都市伝説を彷彿とさせる「巨頭の丘 熊本県」、やや変則の呪い・怨念話「さげすむなかれ 山梨県」、短いが故に恐怖が募る、描写の少なさが理不尽さを強調する「新居の顛末 香川県」は個人的なお気に入りだ。

 

★★★(3.0)