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今なお貴重な「マタンゴ」「くだんのはは」コミカライズを収録!-『歯車 ~石ノ森章太郎プレミアムコレクション~』

『歯車 ~石ノ森章太郎プレミアムコレクション~』

石ノ森章太郎/2002年/375ページ

『仮面ライダーアギト』、『サイボーグ009』と代表作がTV放送中と、その死後も人気の石ノ森章太郎の傑作選。今なお人気の高い『マタンゴ』や小松左京原作の『くだんのはは』など雑誌発表のみの作品を多数収録。

(Amazin紹介文より)

 

 単行本未収録作品、絶版作品を集めたアンソロジーで、今現在でも読むのが難しい作品も収録されており、プレミアムの名に恥じない内容。バラエティに富んだ怪奇漫画集としても普通に楽しめる。

 小松左京原作の「くだんのはは」は原作を非常に忠実に再現しており、くだんのインパクトも抜群。「マタンゴ」は18ページと短く、あのオチまでは再現しきれていないのが少々残念だがなかなか貴重な一品。
 さらに大人向けの短編アンソロジー「石森章太郎読切劇場」を全編収録している(こちらは電子書籍化されている)。SF、怪談、スラップスティック、時代劇と幅広い作風で、ホラーとは程遠い話も混じっている。「海の部屋」―夏の暑さにうだる浪人生の部屋にやってきた見知らぬ美女は、母親、フラれた女へと次々姿を変え…。「だまし絵」―崩壊した世界をただ1人生き残った男。生き残りの女を見つけて結ばれた、と本人は思い込むのだが…。「鋏」―トキワ荘を出て結婚し、新居で暮らす石森章太郎のもとへ届けられる一丁の鋏。「JAM SAUSAGE」―シャム双生児とは関係ない、ジャムとソーセージのシュールでナンセンスな世界。「怪談雪女郎」―吹雪の中、自動車事故を起こしたチンピラ青年は山小屋で雪女郎と名乗る女と出会うが、肉欲のまま押し倒すのであった。「旅鴉」―親分の仇を追って旅を続ける男だが、行倒れた彼を助けたのは仇の妹だった…という人情時代物。「灯台」―霧が立ち込める中、灯台に向かって突き進む恐竜、哺乳類、原始人、古代人、近代人、現代人、未来人の行列。彼らがたどり着いた後には…。「歯車」―産業スパイ合戦を繰り広げる大企業。歯車として使い潰されるのは末端の社員だけではなく…。「衛(まもる)」―自然が残された森を拓いてホテルを建てるため、測量にやって来た一団に動物たちが怒りの牙を剥く。「カラーン・コローン」―死んだはずの恋人が蘇った。他人からは彼女はガイコツにしか見えないらしいが、果たしてその正体は。石森先生、さすがにコレはどうなんですか!? と言いたくなるバカSF怪談。「遠い日の紅」―幼い頃に見た、父から虐待を受け続ける母の姿。父を憎んでいた私だったが、いつしか母が被虐趣味であったことを知る。強盗に殺害されたはずの父の死の真相とは。「時間」―主観的な時間の流れの違いを驚きの手法で表現した、わずか3ページの短編。

★★★(3.0)

 

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