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怖ければ怪奇現象でなくてもOK、 ひたすら厭な話だけを集めた実話集-『忌談』

『忌談』

福澤徹三/2013年/192ページ

上の階に住む同僚の部屋からもれてくる奇妙な物音を聞いたソープ嬢(「水音」)。とんでもなく怖い映像を見てしまったビデオ店店員(「裏ビデオ」)。会う度に顔の変わるキャバクラ嬢(「変貌」)。必ず“出る”から絶対プレイをしないホテルがあるというデリヘル嬢(「NGホテル」)。昔、超高額のバイトをしたことがあるという彫師(「時給四万円」)…。どれもこれも世にもおぞましい37話。

(「BOOK」データベースより)

 

 超常的な要素の有る無しに関わらず、ひたすら厭な話に特化したという変わり種の実話怪談集。いや、怪談ではなく忌まわしい話、すなわち実話忌談集である。デリヘル嬢が絶体絶命のピンチに遭う「白いカプセル」のような犯罪関係、ひたすら悲惨な人生を歩んだコンビニ経営者の末路「コンビニ」のようなひたすら後味の悪い話、度を越したピアッシングなどのSM人体改造マニアの話「痛いひと」のようなアングラな話とバラエティに富んでおり、ただただエグい話を読みたい向きにはピッタリの1冊。

 正統派の実話怪談もいくつかあり、ポスティングのバイトの最中に誰もいない街に迷い込んでしまう「無人街」、地元のものはだれも近づかないという漁師町でチンピラに絡まれたかと思いきや、チンピラ以上に恐ろしい存在と遭遇してしまう「禁区」辺りは大変に怖い。

★★★★(4.0)