『ラストファミリー』
森村誠一/2002年/221ページ
八十歳に近い高齢で、死を待つだけになった老婆・横尾こう。こうには先に死んでしまった息子と娘の、嫁と夫に財産を残したくないという憎悪があった。こうの死の床に立ったのは、あろうことか死へのお迎えでなく、家に忍び込んだ泥棒だった。泥棒に再び怨念の火をつけられたこうは、復讐のために死の床から蘇える…。表題作をはじめ、不思議な出来事が奇妙な世界へと誘う「異次元の夜」、いつもついてない男を描いた「無責任な恐怖」を収録した傑作集。
(「BOOK」データベースより)
全編通してそれなりに楽しく読めるがホラー要素は薄く、多少毛色の変わったミステリといった印象。
表題作「ラストファミリー」は、老い先短いバアさんが泥棒と組んで家族に復讐しまくる話。泥棒があまりに有能すぎて、トントン拍子に息子嫁・娘婿の家庭を崩壊させていく様が痛快さすら感じさせる。ブラックな娯楽作だがオチは取って付けた感アリ。
「異次元の夜 ――ファンタジックミステリー」は、それぞれ異なる女性主人公が奇妙な事件に巻き込まれる、短編10作のシリーズ。作者唯一のSFとのことだが、科学的考証はほとんどなくパルプ感が漂う軽い読み物。「第十話 挑まれた宿命」は『ジョジョの奇妙な冒険』第6部と同ネタ。
「無責任な恐怖」は、何をやってもついてないばかりか、自らの不運を周囲に巻き散らしてしまう男がとある殺人事件に巻き込まれるミステリ。なんだかこれもスタンド能力みたいな話である。森村誠一は『ジョジョ』だった。(適当)
★★★(3.0)